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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-100

 かぽーん………。くどいようだが、風呂場の擬音である。それはともかく。
「いっぱい愛してもらいましたか?」
 ばしゃ、と晶は湯の中に顔を沈めた。エレナに不意打ちの直球を投げられたからである。
「あのね……」
 思わず苦笑い。湯であがった紅い顔は、お湯のためばかりではないだろう。
「ンー、よかったですね。アキラ、スッキリした顔をしてます」
「………」
 もう言葉が出ない。
「それにしても、驚きでした」
 エレナが思い出したように言う。晶は、次にどんな言葉が続くか思い当たるところがあり、身を強張らせた。
「アキラ、キドさんとドウキンしたままで……」
「きゃあぁぁぁ!!」

 ばしゃばしゃばしゃ…

 無垢な笑顔のエレナめがけて、お湯の洗礼。まともにそれを被ったエレナは、それでも表情を変えなかった。
「ゼンゴフカクに眠るほど、EXCITEしてしまったのですね」
「うううう………」
 ぶくぶくぶくと再びお湯に沈んでゆく晶。
 思えば、不覚であった。
 亮と激しく体を重ね、ともに眠りについたはいいが、すっかり寝入ってしまい、エレナが部屋に帰ってくるまで目が覚めなかったのだ。
 それでも彼女はしばらく待ってくれたらしいのだが、さすがに痺れを切らしたそうで。そのエレナに肩を揺さぶられ、ふたりは目を覚ました。
 後の騒動は、言うまでもないだろう。
 とにもかくにも、情交の後ということで汗に濡れていた晶は、エレナとともに風呂場に身を移していたのだ。
「おふたりのHAPPYな寝顔は、まことにガンプクでございました」
「もう……」
 ひょっとしたらエレナは、その無邪気な笑顔の裏で、晶をからかって楽しんでいるのかもしれない。
「ごめんなさい。からかいすぎました」
「………」
 やっぱり。
「……アキラ、今日は格好良かったですよ」
「ん?」
「サイクルヒットに、パーフェクトなんて……どっちも、なかなかできることではありませんのに、まとめてナシトゲテしまうのですから……」
「……ふふ、ありがとエレナ」
「わたしはちょっぴり残念でした」
 ため息を零すエレナ。彼女の今日の成績は、6打数1安打。相手投手とタイミングがあわなかったのか、体調が悪かったのか、彼女にしては当りのない日であった。
「そんな日もあるよ。いろいろあるのが野球だもん」
 いつか亮に言ってもらった言葉。いまの晶には、とても大切な言葉だ。
「次の試合では、アキラのこといっぱい助けてあげます!」
 拳をぐ、と力強く握り締めるエレナ。
 晶は、その仕草にただ苦笑するばかりであった。



「それではお世話になりました」
 翌日、8時を廻ろうかという時間に、城二大の面々はささらぎを後にした。
 出かける際に、ひとりひとりに杉乃が握ったという山菜にぎりを頂き、みながそれぞれ感動していた。赤木に至っては、感動のあまり杉乃を抱擁してしまい、原田にえらくどつかれていたが、これもまた思い出の一幕であろう。
「それじゃ、智子さん、お幸せに」
「式には出て欲しいな」
「あら、いいの?」
「いつになるか、わからないがね」
 智子は傍らの昌人に視線を送って繰り返す。話をふられた昌人だったが、茹で上がるだけで何も言えないでいた。
 あらら、と困った笑みを玲子は浮かべる。
「近くに寄ることがあったら、連絡するよ」
「ええ、待ってる」
 智子と玲子は、昨晩の語り合いの中で、互いの連絡先を交換するほどに意気投合していた。


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