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崩れる日常
【初恋 恋愛小説】

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非日常へ一歩-2

「ねぇねぇ、もう一つのお土産って何??」

急に後ろから話し掛けられた。
かなりの唐突さと、話の内容とタイミングがずばり頭の中にあった事だったので余計に驚いた。
焦って周りに気を配り、皆洗車の拭き上げ中で、二人っきりなことに安心し、逆に少し落ち着くと二人きりということを意識して緊張した。

「渡す前には教えられないよ。今日ちゃんと持ってきてるから、焦んないで。」
「え〜っ!すっごい気になるな〜。」

一般的に「好奇心に満ちた小悪魔な表情」などというが、彼女の場合はちょっと違う。表情から読み取れる感情は一つ。
好奇心
それだけ。それが逆に純粋なんだなと、もう一つの感情を読み取らせてくれる。
人の目を見て話すのが苦手な俺もこの人からは目が…反らせない。

仕事中に至福の時間はそう長く続くわけもなく、洗車の拭き上げ完了とともに皆が戻ってきて、普段通りに仕事に取り掛かるしかなくなった。



スタンドの閉店は十時だが俺は高校生だったので九時までという暗黙の了解のもと一人更衣室で着替えていた。
ま、要するに今日のバイトはおしまい。

するとスタッフルームに誰か入ってくるのが分かった。このスタンドは昼飯の休憩以外は結構適当で、暇な時なら社員の気まぐれで10分ぐらいの休憩に入る事ができた。
まぁ、後は帰るだけだから関係ないな、と思いながら更衣室を出る。
するとそこには図ったように池上さんがいた。
「お疲れ様です。」
取りあえずお決まりの挨拶をする。
「お疲れ様。ちょうどいいとこで休憩入れた。」
と、嬉しそうな顔で池上さん。

ギクッ

内心そんな音が聞こえたような気がする。
続けて
「そんじゃ、早速。もう一つのお土産って何〜?」
と、例の好奇心満面の笑みを俺に向けてくる。
遂に来てしまったこのとき…。
ただ、渡すつもりで買ってきたお土産を渡すべき相手に渡すという行為にこれでもかと緊張する俺。
渡す物が物だけに、しくじればとても気まずくなり、今後のバイトにも影響しかねない。
「あ〜、忘れるとこだった。危ない危ない。」
ごまかしながら、今更ながらに、正に男一匹一世一代大決意といった感じで例のブツを素早く手渡す。
正方形で小さめのプラスチックのケースが入った、オーストラリアのお土産屋のビニール袋を彼女は受け取ると

「ありがとう。家に帰ってから開けるね。」


ずっこけそうになったが、寿命が延びた事と嬉しそうな彼女の顔に安心、納得して取りあえず帰路についた。



その日の夜11時頃、予想通りメールがきた。
冬に似合った着信メロディ。池上さんからだ。
もちろん、「プレゼント」の事だろう。本日二度目の大決意でメールを開くと…

「改めてお土産ありがとう。結構意外だったけど、大事に使わせてもらうよ。」

胸を撫で下ろし、悪い結果にならなかった事と、想像以上に喜んでらっしゃる様子を確認出来て、なんだかテンションが上がってきた。そのせいか、その後恋愛話に発展していった。


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