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崩れる日常
【初恋 恋愛小説】

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崩れる日常-1

「あ゛〜、寒ぃ〜」
季節は秋。落ち葉も目立ち、冬の準備をし始めた寒空の下自転車を縮こまりながら漕いでいる少年がいる。彼は通い慣れたバイト先への道を少し寝ぼけたような顔で急いでいる。
学校が終わってからバイトまでは少し時間が余る。かといって用事を足せる程の余裕もない。家で待機しているとウトウト気分になり、気付けば焦って家をでる羽目になることが多々ある。今日も例外ではなかったようだ。そのわりに飛ばさず、(これぐらいで漕いでりゃ間に合うな)と高を括るなど、どこかのんびり気質…、そう、何事にも当て嵌まるが何かに一生懸命になるといった事がない少年だった。
「おはようございま〜す。」
職場でのお決まりの挨拶。すると
「史一!ギリだぞ!早く着替えてこ〜い!」
俺に対してのお決まりの挨拶が帰ってくる。
焦った振りをしてスタッフルームに入り、その奥の更衣室に駆け込む。
このガソリンスタンドでのバイトはかれこれ半年以上。つまらなくはないがこれといって遣り甲斐もないかも…、といった感じ。
今日もいつも通りに頑張りますかっ、と空気合いを入れ外に出る。
外に出るとさっきは気付かなかった異変に気付いた。いつものように迎えてくれる社員と見慣れたバイト達、そして見知らぬ女の子。「今日から入った新しいバイトの子。よろしくしてあげて。」
西村さん(社員)が言う。
そういや、新しく女の子が来るって聞いてたが、忘れていた。
「池上千裕です。よろしくお願いします。」
「斎藤史一です。よろしくお願いします。」
第一印象はハキハキとした明朗な人だなと思った。
実は俺は、女の人と喋るのは苦手だ。理由は自分ではよく分からない。
だからその後も特に自分から喋りかける事は無かった。
…正直に印象付け足すと可愛かったしな…。

その人が来てから少し職場の雰囲気は変わったようだ。
プレイボーイである内海さん(社員)とその人と仲のよい小内さん(バイト)はやたらその新入りの女の子に話し掛けている。若い女の子は今までいなかったからな〜。仕事そっちのけで夢中になってる。
俺も仕事関係という事もあり、いくらか喋れるようにはなってたが会話に交ざる余地がない。
仕方なくその間は真っ先に仕事をする役目。
理不尽に感じながらもやるしかない。
でも少しずつ彼女の事を知ることができた。
地元の人ではないけど、年は三つ上、会話に聞き耳立てて得た情報によると彼氏はいないらしい。一見女性にはきつそうなこの職場を選んだ理由はホントに偶然でドライブ中にたまたまバイト募集の看板が目に付き、彼女の友達がスタンドで働いてるらしく楽しいと聞かされていたことかららしかった。
ナイス友達ナイス看板といったところだ。
けど知れば知るほど現実も甘くはないとわかる。
まず相手にされないだろ。今をときめく有名大学二年生とかたや年齢=彼女いない歴の高校二年生。
卑屈な考えは得意中の得意。バイトは楽しくなったしそれでいいじゃないか…。毎回そうだが、今回も戦わずして逃げる図式が頭に描かれていた。なかば今回は恋というより憧れに近い。


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