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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜双女花〜-5

『えぇ〜♪
ハイちゃんが夜這い〜♪』
(嬉しそうね…あんた…)
食堂でゼロにハイネルシスと会ったと話した途端、ゼロはこんな風に叫んだのだ。
あぁ…見られてる…すっごく…
叫んだのだ、周りに良く聴こえるぐらい。
実はハイネルシス、メイド達の間での人気は高い。ハイネルシス自身は女性に興味無しみたいだが、服装と化粧をすれば女性に見えるくらい綺麗な顔立ちとスラリと伸びた身長があれば人気の一つや二つ簡単に出てしまう。
『でも、そうと決まった訳じゃないじゃん…』
『でも、朝早くだよ?
水竜館だよ?
夜這いしかないよ♪』
確かにそれ以外の理由を見つける方が難しいが…
『てか、ゼロ、声大きいって。
皆に聴かれたらそれこそ…』
………ヒソヒソ………ハイネルシスがねぇ………きっと相手は………
(遅かったか………!)
昨日はシャナで、今日はハイネルシスの話題で井戸端会議が始まってしまった。

(ごめん、ハイネルシス…)
心の中でハイネルシスに謝った。

『はぁ……』
この頃溜め息が多い。
朝食が終わって、部屋に帰る途中なのだがこの溜め息は何故出るのだろう?
そういえばゼロはどうしたのだろう?さっきから姿が見えないが…
少し辺りを見回すと、通路の向こうからアルネが歩いて来た。
『スー、ちょっと良い?』
『はい、なんですか?』
『シャナさんに伝えてくれないかしら?
仕事場所は白竜館の一階だから、支度したら来てって。』
そんなの自分で伝えれば良いのに、と思ったが言われた仕事なのだからと承知した。
『そういえば、アルネさん。
ゼロ見掛けませんでした? どっか行っちゃったのですけど…』
『あら、そう………ごめんなさい、知らないわ。』
アルネはそう答え、仕事があるから…とだけいうと去って行った。
あの人いつも仕事だなぁ…
紅様の右腕、でもシャナの登場でその関係が少しおかしくなったような気がしていた。
『…どうなのかねぇ…』
唸りながら歩いていると、前方にゼロが寝転んでいた。
いや、ゼロの下に、誰か…
あれはシャナだ、ゼロがシャナを…あの状況はどうみてもゼロがシャナを襲っている。
『ゼ〜〜〜ロ〜〜〜〜』
腹の底から低い声を出しつつ近付き、ゼロをシャナから引きはがす。
『アンタ、何してんのよ?』
胸ぐらを掴み引き寄せて、鋭く一直線にゼロを見据える。
『えとねぇ…そのねぇ…』モグモグと定まらない言葉を発するゼロ。 綺麗な青目があちこちへさ迷い頬には汗が見える。
『な・に・し・て・ん・の!』
私は口調を強くして、もうそれは獲物に噛みつくライオンのような眼孔をして言った。
『…ちょっとつまみ食い…』
『あぁ!?』
『! ふぇ…ごめんなさ〜い〜』
はぁ…まったく、可愛い子に目がないんだから…
『はぁ… 大丈夫? まだ何もされてない?』
泣き出したゼロを放って、シャナに話しかけた。
だが、どうやらシャナは私の剣幕に圧されてしまったようだ…
(あんたが圧されてどうする…)
『あ、はい、大丈夫です…』
『ごめんなさいね、この子悪戯するの好きだから。』ゼロは私の後ろに回ってしがみついていた。
『ちょ、ちょっとふざけただけだもん… 本気でするきはなかったもん…』
馬鹿…そんなの…
『当たり前! 本気でやったら報告ものよ!』
エグエグと泣きながらも、ゼロは頷いた。
『うん、ありがと… スーちゃん好き…』
まだちょっと泣きながらゼロは廊下を走り去っていった。
『・・・ゼロさん、いくつなんですか?』
シャナが聞いてきた。
『今年で19だったかしらねぇ…』
19と答えると、シャナは驚いていた。素直に驚きが表情に出ていたのだ。
(解りやすい子ね…紅様は素直な子が好きなのかしら?)
そんなことを考えていたらアルネに言われたことを思い出した。
『シャナさん、あなたの仕事場は白竜館だから。』
『え? 仕事場?』
『そぉよ、仕事場。
まさかあなた、何もしないでただここに居るつもりだったの?
メイドの仕事をするの。 今日からだからね。 支度が出来たら白竜館に行って。』
さて、伝えること伝えたから、私は行きましょうかね。と、一人納得してシャナと別れてゼロの後を追う。


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