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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜双女花〜-2

『で、アルネさんこれからお出掛けみたいですけど、またですか?』
また、と言うのはまた奴隷市場で美女を買ってくるのか?と言うことだ。
『えぇ、まぁ、それが紅様の趣味だしね。
お部屋にはまだ空きがあるし…春に8人も抜けたから。』
紅館に居る奴隷達の多くは館を出て、社会に旅だって行く。
身分関係無く愛し合った男性の元へ嫁いで行くのが一番多い。
ただ、それ以外にアルネのように住み込みで働く家政婦になる人も居る。
『今日は珍しいオーダーだもの♪』
『珍しい…?』
『えぇ、なんせ、金額の上限無し、なんて言われたの初めてよ。
どんな子なのか楽しみだわ♪』
フフフと実に楽しげな笑みを浮かべながら、アルネは出かけていった。
『………スーちゃ〜ん』
呼び声の方を見ると、落ち葉の山から手が出ている。
『あんた、まだ埋まってたの?』
『そそ、助けて♪』
………
『ね? 助けて♪』
……………
『スーちゃ〜んってば〜』
溜め息を吐き、箒を投げ出し近付く。重くもなんともない落ち葉にわざわざ埋もれているゼロ、絶対何か考えている。そして、ゼロの考えることは…
『揉んだら叩くからね。』
一瞬、うっ、と図星なリアクションで手がびくついた。
『じゃあ〜』
『揉み、擦り、キス、全部駄目。』
再びうっ、と反応する腕。そんな腕を掴んで落ち葉から引きずり出す。
『はぁ…なんであんたはそんなにHしたがるかねぇ…』
ゼロは四六時中スリスリしたり、モミモミしたりとセクハラ攻撃をスーに繰り出す。もちろんスーは怒るのだが、それすらゼロにとっては満足なようだ。
『だってぇ〜♪ スーちゃんを感じていたいんだもん(はぁと』
………あぁ、秋ね…肌寒いわ………

『良くわかる…その気持ち…』
また後ろから声がした。アルネが帰ってきたのかと思い、振り返るとそこには赤いマントを身に付けている獣人、この館の主人、ウェザが立っていた。
『うわぁい♪ ご主人たま〜♪』
先程と同じく駆け出してウェザに飛び付く。
今度は避けられることなく、しっかりと抱きとめられた。
『ゼロ、今日も元気だね。』
『うん♪ ゼロゼロ絶好調♪』
はたから見ると、良き父と娘の関係だろうか?しかし、私はそのふれあいが嫌いだ。
と言うよりも、ゼロが他の誰かと仲良くするのが嫌いだ。
私は、普段ゼロにそっけないが結構嫉妬深い一面を持っている。
自分でもそれがわかっているのだが、どうも素直になれない自分がもどかしい。
『スーちゃん♪』
いつの間にか、ゼロは私の腰に手を回している。
上目使いで私を見つめるゼロに、私は嫉妬していた自分にゼロが気付いて、こうして擦り寄って来たように思えた。
ゼロはスーちゃんだけだよ? と。
『…ゼロ…ありがとう…
…ところで紅様、お出掛けですか?』
ウェザはうんうんと頷く。
『奴隷市場に行ってくるんだよ。
アルネに頼んだけど、少し不安でね。』
ウェザは微笑を浮かべたが心なしかその笑みは少し憂いをおびている気がした。
そして、私を驚かせた。 アルネさんに任せて、不安だなんて言う紅様を初めて見たからだ。
『紅様、馬車の用意が出来ました。』
執事風な服装と眼帯をした男がウェザの元へ歩いてきて、片膝でひざまずく。
『あぁ、ハイネルシス。 ありがとう。』
ハイネルシスと呼ばれた男は後ろで一つにまとめた長い白髪が目につくが、まだ若く見え25を越えてはいないだろうと私は思っている。
『恐悦でございます。 紅様のお役に立てることがハイネルシスの最大の喜び。』
無表情にそう答える。美男と言うにふさわしい容姿のハイネルシスだが、何しろ無表情でどこか冷たいイメージがあるため、若いメイド達が恋心を抱いても実際ハイネルシスに近寄る物好きは一人しか居ないため、詳しいことはわからない。 さらに人間のようだが、そうでは無いらしい…全ては噂だが。
『ハイちゃんカッコいい…♪』
スーの後ろからゼロがハイネルシスに話しかける。
そう、一人の物好きとはゼロのことだ。
もっとも、ハイネルシスが男なので眼差しは普通だが。
『では行こう…
ハイネルシス、他の馬達に飼い葉をやってくれ。』
『了解致しました。 いってらっしゃいませ。』
ゼロを見ようともせずに、ウェザを送り出すとハイネルシスは馬小屋の方へ歩いて行った。
『ありゃ…』
『ゼロ、あんなやつ放っておきなさいよ。
一人が好きなんじゃない?』
ん〜と唸って暫しハイネルシスが去っていった方を見つめている。
『さて、庭掃除終わったから昼食よ。 ほら、いい加減行くよ。』
まだ見ているゼロの手を引き、食堂へ向かっていく。
『ねぇ…スーちゃん。』
『何?』
二人で歩いていると、ゼロが話しかけてきた。
『ハイちゃん…たぶん好きな人居るんだよ。
そんな目だもん♪』
思わず立ち止まり、ゼロの顔を見つめてしまう…
『あのハイネルシスが…?誰を?』
だが聞き返しても、返事は無く、ゼロは愉快そうに鼻唄を歌いながら駆け出していた。
たぶん返事は「ヒ・ミ・ツ♪」

『はぁ…』
食後、水竜館の二階廊下を歩いているが…なんだか、重い…
いや、確かに背中にゼロが乗っかっているけどそれとは違う。
『あの二人、喧嘩でもしたのかな?』
『アルちゃんとご主人たま?』
そう、と頷く。


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