投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

紅館の花達の最初へ 紅館の花達 12 紅館の花達 14 紅館の花達の最後へ

紅館の花達〜転生花〜-6

『この白竜館はね、私の一階は執務室とか事務関係だけど、三階は紅様の自室があるのよ。 紅様に言ってね、夕食は運びますって。』
アルネに背を押され、私は階段を登っていく。
『あの、アルネさん…』
『何かしら?』
私は振り返り、アルネを見る。
『…ありがとうございました。』
頭を下げて、お礼を言う。だが、アルネは嬉しそうに笑っているばかりだ。
『あの、何が面白いのですか?』
『え? フフ、紅様の言ってたこと。 間違いじゃなかったんだなぁ〜って。
…私が間違ってたんだって』
…どういう意味だろう?
『ほら♪ 早く♪』
急かされるままに、階段を上がって行く。

…三階は、質素な造りだった。木製の壁と絨毯。紅様のことだから、もう少し豪華にしていると思っていた。
だが、何故だろう…?
『懐かしい…?』
この匂い…前もどこかで…?
『そう思う?』
『きゃ!?』
また突然後ろから声がしたと思ったら、紅様に抱き締められていた。
『く、紅様…おどかさないでください…』
…体が震えてる。罪悪感が心に浮かぶ。
怒る…よね。相手が女の子でも、体許しちゃうなんて…
『怒らない…』
『えっ!?』
紅様が耳元で優しく呟いた。
『もう反省したんだろう? それなら怒ることは何も無い…
むしろ、前よりも成長したんじゃないか?』
知っていた…ご存じだった…
体の震えが増す…ただ、さっきまでとは違う理由で…
知っていたのに、こうして迎えてくれるのですか?
まだ優しくしてくれるのですか?
私の目からは、自然と大粒の涙が溢れた。
『う…ヒック…紅様…紅様ぁ!』
振り返り、紅様に抱きつき泣いた。
そんな私を紅様は優しく抱きしめ返し、大丈夫と呟いてくれた。
『ふぅぅ〜 ごめんなさい…紅様〜』
髪が優しく撫でられる。
紅様は、何もかもが優しい。優しく包んでくれる…

『落ち着いた?』
しばらく泣き続けた私だったが、ようやく収まり、紅様から離れる。
『あ、駄目。』
離れようとした私だが、再び紅様に抱きしめられた。
『紅様…?』
『今度は、私の番で♪』
笑っている…ゼロと同じような笑みで…
『その…あの…』
『嫌?』
『…嫌じゃ…ないです…』ただ、考えると恥ずかしいだけなのだ。
…恥ずかしい?あれ?変。ゼロの時にはそんな気持ちはなかったのに…
これが、好きな人とするということなのかしら…?
『私の可愛いエルフさん、どうぞ御許しを♪』
紅様は私をベットに押し倒す。そして、キスをしようと顔を近付けるが、止まる。
私が悲しい表情をしていたからだ。
『…やっぱり、嫌?』
『違います…ただ…』
思い出してしまったのだ。
紅様の最愛の人が誰なのか…
『…私も、代わりですか?』
ピクリと紅様の猫耳が動く。
『…シャナ…?』
『紅様。 私はシャルナ様の代わりですか?
火竜館の石像、あれはシャルナ様でしょう?
あのワンピースもシャルナ様のですね?
私が似ていたから! あんな大金を出して買ったのですか?』
思い、溜っていたことを吐き出す。
しかし紅様は、黙ったままだ…
『似ていたから! 抱いたのですか!?』
『シャナ…それは…』
紅様の表情は困っているようでもなく、笑ってもいない…
何かを決心した。そんな表情だった。
『…シャルナは、エルフの女だった。』
私から離れ、椅子座り語り始めた。
『…彼女は、そう、君にそっくりだった。
おしとやかで、優しくて…私は彼女が自分の世界の中心だった。』
少し上を見上げている。
遠くを見る視線、その先に居るのはシャルナ様なのだろう。
『私とシャルナは、一目惚れで、愛し合い暮らした…この紅館を作って奴隷達を買い取り、奴隷身分から解放し始めたのもそれからだ。』
椅子から立ち上がり壁を撫でる。
『でも、彼女と私の決定的な違い…
それは寿命があることだ。 彼女は寿命で死んでしまった…
ただ、彼女は神官だった。 聖魔法の奥技の一つを死ぬ前に使ったんだよ、シャナ。』
紅様が私を見つめる…目を、目の奥を見透かすほとじっと。
そして、紅様を見つめる私の心が…ドキドキする。
『その魔法は、転生魔法。
信じられないかも知れないけど、君はシャルナの生まれ変わりなんだよ。』
いわかには信じられる話ではなかった。でも、私の心はそれを否定しない。
それが肯定しているのだろうか?わからない…
『…シャナ。 でも、生まれ変わりがどうのこうのより、聞かせて。
…私のことが嫌い?』


紅館の花達の最初へ 紅館の花達 12 紅館の花達 14 紅館の花達の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前