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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜@
-14

「おい」
不意にその少女にアルスが話し掛けた。
すると少女は黙って振り返る。
「やつらは何者だ?何故追われていた?」
アルスは尋ねる。
「・・・・・・解りません。私には何も。」
とだけ少女は答える。
「どこから来たんだ?」
「・・・・・解りません。」
それを聞いてアルスもフォルツも呆れたような顔をする。二人にはその少女が自分達をからかってるように思えたからだ。
しかしすぐにその後少女が続けた。
「私は・・・・・何も解らない。自分が誰なのか。
故郷も、今まで自分がいた場所も・・・・・知らない」
そう悲しげに話す少女を見て、二人はその少女がからかっている訳では無いことに気付く。
「もしかして記憶喪失・・・ってやつか?」
そう尋ねるアルスに少女は首を横に振る。
「生まれてからの記憶は・・・・・あります。
ずっと小さな部屋で過ごしてきたこと。」
少女は静かに語った。
「ずっとって、外に出たことは?」
驚いた様子でフォルツが尋ねると少女は首を横に振った。
「マジかよ!君今いくつだ?」
また驚いた様子でフォルツが尋ねる。
「生まれてから18年です」
「じゃあ俺達の一つ下か、ってそんなことより18年間もそんなとこに閉じ込められてたのか?」
少女は頷く。
「だから、私は何も知らない。外の世界のことも、自分のいた所も・・・・・自分のことも」
少女はまた静かに語る。
「つまりそこから逃げ出して来た訳か、そしてさっきの連中はお前を閉じ込ていた連中って訳だな」
「・・・・・」
少女は何も言わなかった。だがアルスは大体悟った様でそのことにはもう触れなかった。
「お前、名はあるのか?」
最後にそう尋ねるアルスに少女は静かに頷く。
「ルナ、私はそう呼ばれていました。」
「へー、良い名前じゃん。あ、俺はフォルツ。こっちの赤いのはアルス」
フォルツはまた名前で突っ込まれるだろうと思いながら明るく名乗った。
「はい」
そう答えただけのルナにフォルツは戸惑った。今まで名前を名乗ると 大抵その名前に対する質問や突っ込みがあったからだ。だがフォルツはすぐに察した。
「ところで行く宛はあるの?」
そう尋ねるフォルツにルナはまた静かに首を横に振る。
「そんじゃ何か判るまでしばらく俺達と一緒に行かない?俺達も特に行く宛あるわけじゃないんだ。俺は呪文を、こいつは剣を極めるために色んな所を旅してるんだ。
まあよくある話ね」
終始明るく接してくれたフォルツに多少心を開いたのか、ルナは少しだけ明るい表情をして頷いた。
アルスは、恐らくこういう流れになるだろうと思っていたのか?珍しく納得した様子で何も文句を言わなかった。
三人はまた同じ道を進む。
変わらない道に終始うんざりのアルスとフォルツだったが、ルナが仲間?に加わったことで多少景色が違って見えた。
そして二人はやはり気になっていた。
この少女が何者なのかを。
18年という長い月日を小さな部屋に閉じ込められて育ち、世界のことを何も知らないルナ。
何故追われていたのか?
そして考える。これからルナをどうするかを。
故郷を探すか?いや故郷など無いのかもしれない。ルナが逃げ出したくなった場所が故郷なのかもしれない。
しかし 魔物のいる場所を求めては戦う。そんな旅にこのまま連れて行くわけにはいかない。
どこか 先程の追手が来ないような地、別の国で住みやすい場所を探してそこで暮らしてもらおう。
少なくともアルスはそう考えていた。

色々な思いを巡らす中 遂に一つの町が見えた。


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