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WAKALE
【失恋 恋愛小説】

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WAKALEー浩人ー-5

ガチャ…

ドアが開いた。
『かけ…』
まさに、予感的中。翔の代わりに出てきたのはーー、今回の事の原因でもある、美貴ちゃんだった。
『ごめん。翔が出たくないって言ってさぁ。あたしが代わりに…』
美貴ちゃんは平然な顔をしている。
『あ、ああ。まぁいいや。これからどうせ話すし。てか…何でここに?』
訝しげに聞いた。美貴ちゃんは少し、瞳を揺るがせた。
『空のバイト先行こうとしたらちょうど会って…。んで、すっごい死にそうな感じだったから心配でさ…。』
空ちゃんのバイト先に?とゆうか、
『わざわざ送らなくてもいいんじゃないか?子供じゃないんだし。』
嫌悪感が募った。空ちゃんの親友でありながら、その親友の彼氏…まぁ元彼氏だけど…、家に上がりこむなんて。いくら何でも非常識じゃないか?
『まぁ…、そうなんだけど…。』
美貴ちゃんがバツの悪そうな顔をする。とそこへ、奥にいた翔が出てきた。
『俺がついてきてもいい、って言ったんだよ。』
かなり不機嫌そうだ。なんなんだよ、お前…。
『翔…。』
この女…、嬉しそうだし…。
『あそ。ごめんね、美貴ちゃん。』
あまり心を込めずに言った。とにかく今はこの女はどーでもいい。このバカ男が先決だ。
『おいっ、そんな言い方…っ』
そう言い返してきた翔の言葉を遮り、
『話があるって言ったろ。とにかく二人で話したい事があんだよ。』
思い切りドスをきかせた声で言った。いつもは温厚な俺だけど、キレると俺は手付かずになる…らしい。今も、もう少しでキレそうだった。このシチュエーション。翔の優柔不断さ。この女の非常識さ。耳や目や心に残る、空ちゃんの言葉や涙。全てが俺を苛つかせてた。
『…わぁったよ。』
翔は渋々承諾した。
『じゃ、じゃぁあたし…帰るね。』
美貴ちゃんが横から遠慮がちに言った。一旦中に引っ込んでカバンを持ってくると、『バイバイ』と小さく言って、逃げるようにして、帰って行った。
『中、入れよ。』
翔は不機嫌そうに言って、俺を中へ促した。
『そんな苛ついた様子で俺に一体何の用だよ。』
気のせいじゃない。翔も苛ついてる。しかも喧嘩腰だ。…上等じゃねえか。
『空ちゃんに会ってきた。』
翔は何も応えない。
『何でか聞かないのかよ?』
そう聞いた。翔の性格は俺が一番よく知ってる。親友と言えど好きな女と二人きりで会われたら、この男の場合間違いなく、キレる。
『…わざわざご報告ありがてえけどよ』
やっと翔が発したかなり低い声。やっぱり相当キてるらしい。けど、こっちだって負けちゃいねえ、と思っていたが、次の言葉でそれは見事に打ち砕かれた。
『俺知ってるから。』
『………………は?』
『見たんだよ。俺も…、今日空のバイト先行ったから。』
そうかーー。さっきの美貴ちゃんの言葉の違和感。<空のバイト先に行こうとしてた途中で翔に会った>。そう言ってた。だからか…。だから、こんなに苛ついて…。
直感的にマズいと思った。この感じからして、間違いなく翔は誤解してる。俺が翔を裏切って、空ちゃんを奪ろうとしてる、ってーーー。
『俺はどんなになったってあいつが好きだから、謝ろうと思ったんだよ。そんで…、もう一度…最初からやり直したい…って…。けど、空のトコには先にお前がいた。何でだ?誰の許可貰って二人きりで会ってんだよ。あ?』
翔の瞳が俺を睨みつけてる。やっぱり。翔は完璧に誤解してる。今にも殴りかかってきそうだ。
『空ちゃんとは友達だ。友達同士が会って何が悪い。』
どうにかうまく言葉を探すつもりが、口を出た言葉はそれだった。


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