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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ6-2

「うん、じゃあまたね」
悦乃は電話を切ると、ベッドに寝ころんだ。
「楽しいなぁ……」
ふと十数年前を思い返す。
言いたい。瞬くんに言いたい。
でも…もしそれでも思い出してもらえなかったら。
きっと私は辛いだろう。
お母さんは些細な出来事だと言った。
たしかにそうだ。瞬くんにとっては何でもないことかもしれない。

でも……

私はそのとき……確かに瞬くんに恋をしたのだから……

住所も電話番号もわからず、名前しか知らなかった彼。
もう会えないと思っていた。
再会したとき、本気で運命だと感じた。
だから……伝えるのがこわい。





「由貴ちん」
「なに?」
「うちもね、実はどうしたらいいかわからないんだ」
「……うん」
「うちは…幸せにならなくちゃいけないの」
「……」
「誰がうちを幸せにしてくれるのかな…」
「……」
「愛なんて…信じられないから。うちは、ずっと前から“幸せ”ってお金があって、なに不自由なく過ごせることなんだと思ってるの」
「……葵、それは」
「わかってる。でも…その考えを捨てられないの。小さい頃から、そう両親に教えられたから。」
「あんたも…普段は脳天気なクセして、かなり悩んでるのね」
「……うん」
「よく…考えなさい」
「あー!それさっきのうちの台詞ー!」



電話を終えると、ベッドに倒れ込む。
思い出せ…
思い出せ…
明石…悦乃…
目を強く瞑り、拳に力を入れる。
『………だめか』
俺は悦乃が気になる。
もしかしたら、好きなのかもしれない。
だけど…思い出さないと俺はダメなんだよ。
思い出さないと…守れねぇだろ…
『思い……出……』
瞬はやがて睡魔に襲われ、静かに眠りについた。



二人の出会いには何があったのか。

瞬がすべてを思い出したとき、そこにはなにが待っているのか。


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