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明日を探して
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明日を探して-3

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 もう何年も続いている、戦争だった。
 わたし達は、自由惑星連合に所属する、先鋭の『サイキックフォース』部隊であった。
 無敵のエスパー部隊、そう呼ばれていた時期も有ったようだが、今と成っては、戦況の悪化に苦戦を強いられるばかりである。
「ラルフ、敵の様子はどうだ!」
「敵測、71・・16・・98・・ 駄目です、完全に包囲された模様です」
「くそったれっ! バズーカでも残ってりゃ、ぶち込んでやるんだがなっ!」
「ヒッヒヒィッ! そんな物、奴らに通用するかよぉ」
 敵は我々に対し、対エスパー部隊用にと開発された『アンチサイキックフィールド(超能力遮断障壁)』付きの、戦闘機動歩兵を投入して来たらしい。強力なシールドと、強力な火器を装備した、新型のロボット兵士の前に、我々は成す術も無かった。
「こうなったら、包囲の薄い所を強行突破するしかあるまい」
「隊長っ! わたしもやります! うぐぅっ!」
「無理するなっ、エクステル小尉! 右足が折れてるんだぞっ」
 敵の攻撃を受け、負傷したわたしは隊長に抱えられながら、自分の不甲斐なさと、折れた脚の痛みに戦士らしからぬ涙を流していた。
「隊長、右奥に居る奴、どうやら『ブースター(増幅器)』のようです」
 見張りをしていたラルフ伍長がそう言うと。
「ほんじゃぁ、あいつさえぶっ壊しちまえば、他の奴らの防御力が落ちるって寸法かっ!」
 握り締めた右拳を、左の掌に撃ちつけながら、プロレスラーの様な大男、ガイロック中尉もそんな事を言い出す。
 そんな仲間の報告を聞くや、部隊長のクルーガーも、
「よしっ! 俺とラルフでブースターを殺(や)る。ガルロックとドメストは援護だ」
 そんな指示を仲間達に出していた。
「隊長っ、わたしは…… わたしは何をすればいいんですか!?」
 わたしは痛む右足を押さえながら、強がって隊長に指示を仰いだ。
 いつもは怖い顔しか見せない隊長であったが、
「エクステル小尉、君には頼みたい事がある」
 突然改まったようにそう言うと、普段余り見せる事のない笑顔を、わたしに投げ掛けて来たではないか。
 そして言う。
「もし、敵の突破に失敗したら、俺はこれを使う」
 隊長は言いながら、ペンダントのようにして首に掛けていた小さなカプセルを取り出すと、それを仲間に見えるようにと、掲げて見せた。
「隊長それは…… もしや『マイクロ核爆弾』では」
「ヒッヒヒィッ! そいつを使ったら俺たちはおろか、半径800メートル以内の物は全て灰になっちまうなぁ、はっはぁっ」
 隊長は、ペンダントヘッド程の大きさをした『超小型核弾頭』を、自分たちの運命を切り開く最後の希望の鍵の如く、拳で握りしめ、
「これが最後の決め手だよ、諸君!」
 そう言って、口元をニヤリとさせ、不器用な苦笑いを浮かべて見せる。
 仲間達もそれを見て、おのおの、笑っていたようである。
「小尉! いいかこれは命令だ! 俺たちがブースターを破壊したら、君は直にここから離れるんだ。アンチサイキックフィールドが消失すれば、君のテレポート能力で脱出できるはずだ!」
「隊長っ! だったら皆で!!」
「それは無理だ! 君の体力はもう限界だ! 自分一人がやっとってところだろう。それに俺たちは腐っても、サイキックフォース最強の『チームΩ(オメガ)』だ! 全員で敵に背中を見せたとあっては、エスパー部隊の恥だからな。明日の為にも君は必ず生き残って、我々のような愚かな者どもが居たことを、後世に伝えて欲しい」
 隊長はそう語ると、わたしの肩に手を置き、ぎゅっと握り絞め、励ましてもくれる。


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