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明日を探して
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明日を探して-4

「そう言うことだなっ。皆でおっ死(ち)んじまったら、俺たちの武勇伝を語る奴がいねえ。それに門限も厳しいし、女の子はもう帰らねぇとな」
 無骨な大男、ガイロックまでもがそんな事を言って、わたしの身を案じてくれる。
「あとの事は頼みます。小尉殿!」
「ヒッヒヒィッ! おら〜ぁ、死ぬ気はねえんだよ! おめ〜良い女だからな、帰ったら一発やらせろっ! ヒャッヒャァ!」
 ……皆ぁ。
 これが今生の別れとでも言うのか、真面目なラルフ伍長も、普段はトラブルメーカーでしかないドメスト軍曹までもが、そんな事を言って笑っている。
 わたしは彼らの顔をまともに見る事すら出来ず、ただただ溢れる涙を拭うばかりであった。
「そう言う訳だ。死ぬなよエクステル、これは命令だ! また会おう!!」
 それがわたしの聞いた、隊長の最後の言葉だった。
 隊長達は瓦礫(ガレキ)と化したベースに一人、わたしを残すと、敵陣へと突入を開始した。
 激しい戦闘が続き、やがて光の柱のような爆発が起きると、彼等の姿はその光の中に消えて行った。
 わたしは一人、仲間を見捨てるようにしてテレポートでその場を逃れるも、どうやらショックで気を失ったらしく、気が付くと見知らぬ土地で、見知らぬ老夫婦に助けられ、どうやらそこが自分の居た世界とは別の世界だと気付くには、体の傷が癒(い)える以上に、時間が掛かった。
 それ以来こうして『占い師』に成りすまし、もとの世界へ帰る方法を探して、この世界を旅していたのである。


 ******


 わたしは少女の小さな手を握り締めて、流れ落ちる涙を止められないまま、全身を小刻みに震わせていた。
「お姉ちゃん…… 大丈夫……」
 心配そうにわたしの顔を覗き込みながら、そう呟く少女の声に、ようやくわたしも我に帰ると、慌ててゴシゴシと服の袖で、涙を拭い取っていた。
 あれから何年経ったと言うのか、今日この少女に出会わなかったら、彼女が『あしたを探してほしい』などと言い出さなかったら、わたしはこの記憶を永遠に忘れていたかも知れない。
「ごめんね…… ごめんねお嬢ちゃん。平気だから…… わたしは平気だから」
 そう言って、俯いて涙を流すわたしの頭を、少女は小さな手でそっと撫でてくれていた。
 何時しか、わたしの足元に居たはずの白い子猫もテーブルの上に登って来て、心配そうにわたしの塩辛いほっぺたをペロペロと、舐めてくれていた。
 そんな子猫を見て、少女が叫んだ。
「あっ! あした!!」
 すると小さな白い子猫は、少女の胸に向かって飛び付いて行き、少女は子猫をしっかりと受け止め抱きかかえると、嬉しそうに。
「あした! あした! リミィの『あした』!!」
 そう声を上げる。
 そんな少女の腕の中で子猫も嬉しそうに、ミューミュー鳴いていた。
 どうやら少女が探していた『あした』とは、この子猫の名前だったようである。わたしは何だか可笑しくって、また、涙が溢れた。
「『あした』はね、いつもリミィといっしょなの。きょうもあしたも、その次のあしたも、ずーとずーと、いっしょなの」
 少女は嬉しそうにそう言いながら、子猫の小さな顔に頬擦り(ほおずり)をしていた。

 
 今日と変らないあした、いつまでも変らない明日。少女にとってそんな明日が、ずっとずっと続く事が、最高に幸せなのであろう。 
 そしてわたしは。
 わたしは、今日と同じ明日を送る訳にはいかない。
 わたしは元居た自分の世界へと帰るべく、その方法を探して旅を続けねばならない。
 わたしが元居た世界へ帰れた時、わたしにとって本当の明日が、始まるのだろう。


 ……そんな気がした。


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