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明日を探して
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明日を探して-2

『明日を探して欲しい』そんな抽象的ではあったが、切実な願いなど、わたしが占い師になって以来、今までに一度だって聞いた事は無いだろう。恐らく、何か辛い思いをして明日と言う未来に、希望が持てなくなったのであろうと、わたしはそう解釈して疑わなかった。
 だが少女は、その小さな両手をわたしに握られたまま、
「リミィ…… いっぱいいっぱい探したの、でも見つからないのっ、あしたが見つからないの!」
 そう言いながら、首を横に振るばかりである。
 そんな彼女の瞳から零れ落ちた大粒の涙が、彼女の手を握るわたしの手の甲をも、濡らす。
「解ったわ。解ったからもう泣かないで。……ねっ」
 わたしはそう言って、少女の手を少し強めに握ると、出来る限りの微笑みを彼女に向けた。
 少女もわたしの言葉を聞いて、幾分落ち着いたのだろう、
「お姉ちゃん…… あしたが見える?」
 と、少し明るい顔を取り戻し、泣きながらではあったが、微笑んでも居た。
 実際、未来予知と言う事をわたしもやった事が無いわけでは無い。だがわたし程度の予知能力など、めったに当たることも無く、それは身を持って解ってもいた。しかもそれが他人の未来を予知するともなると、正直、至難である。
 それでもわたしは、少女をテーブルの向かい側の椅子に座らせると、とりあず目の前に有る水晶球へ両手を翳(かざ)し、占い師が使うであろう如き、呪文モドキを唱えてみる事にした。


 ******


 そこは戦場だった。
 果てし無く広がる荒野に、幾筋もの黒煙が立ち上り、破壊された兵器の残骸が、あちらこちらに散乱していた。
「小尉っ止めろっ! お前一人じゃ無理だ!」
 逞(たくま)しい男性の声を背中に浴びて、わたしは持てる力を振り絞って、敵と戦っていた。
「隊長っ! 此処はわたしに任せて、早く撤退してください!」
 所詮、強がって居ただけに過ぎない事は、わたし自身、良く解っていた。
 敵の最新型ビメイダー(人型機動歩兵)に対して、わたし程度の力では全く歯が立たない事など、百も承知だった。
 だが…… それでもわたしは戦いたかった。
 か弱い人々を守る為に、平和な明日を迎える為に。そしてなによりも、愛するあの人の役に立ちたかった。
「小尉っ! もうこのベースは保たないっ! ここは一旦引いて、部隊を立て直すんだ!!」
「まだっ…… やれます!」
「奴らは『アンチサイキックフィールド』を持ってるんだぞ! Aクラスとは言へ、君のサイキックパワーも奴らには効かないっ! 戻るんだ小尉っ!」
「きゃあーーーっ!!」
「小尉っ! 小尉ぃーーっ!!」


 ******


「あしたは、見つかった? ……お姉ちゃん」
「えっ!」
 呆然としていたわたしに、少女が小声でそう言った。
 恐らくは、ほんの一瞬だったであろう。わたしは少女の明日を探すべく、自身の予知能力を使ったはずだったが、脳裏に浮かんで来たのは、わたし自身の過去の記憶だった。それも思い出したくはない、忌まわしい過去の記憶。
「ご、ごめんなさい…… もう一度やってみるから」
 わたしは自身の左手を伸ばし、少女の右手を掴むと、今度は彼女のテレパシーの手伝いを借りて、少女が未来に何を求めているのかが解ればと、再び能力を使った。


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