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あたしにとってのふたり
【幼馴染 恋愛小説】

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あたしにとってのふたり-5

あたしとこいつは忍び足で音をたてないように階段を昇った。
お母さんを起こさないためにと、もしかしたら妹も寝てるかもしれないと思ったからだ。

階段の途中で飼い猫が寝そべっている。その段を一段飛ばしで越えていく。

階段を昇りきった所で、後ろからついてきていたそいつに肩をポン、と叩かれ振り返るとそいつは小声で一言

「パンツ見えた」

あたしは無言でさっきと同じ耳を捻り上げる。
そいつは声にならない声を上げて悶えていた。


カチャ‥‥

妹は、ドアの開く音に気付いて目を開けた。

「おかえりなさっ‥‥ケホっ、ケホっ」

「無理して体起こしちゃだめだよ。‥ごめんね、起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫。目、瞑ってただけだから」
「そう‥‥なんか食べたいのとかある?」
「ううん。お母さんがお粥食べさせてくれたから大丈夫。」
「そう‥‥。」

額に貼られている熱冷ましシートに手を置くと、妹は気持良さそうに目を閉じた。

「お兄ちゃん」

目を閉じたまま妹は、心配そうな顔をしているこいつを呼ぶ。

「ん、どうした?」

「手‥‥握って」

妹はそう言うと掛け布団からそっと手を差し出した。
こいつは何も言わずにその手を握る。

その柔らかくて優しい眼差しが、あたしに向けられているんじゃないんだと思うとズキッと胸がうずいた。

あたしはその顔から目を逸らして、もう一方の手で妹の胸をさすった。


しばらくすると、妹は寝息をたて始めた。


妹のかわいい寝顔を見て、あたしの心の醜い部分が湧き上がってくる。
それを押し潰して、精一杯の優しい笑顔をつくる。
妹想いの姉でいたいから。
ホントにこの子はいい子だから。

大好きだよ。あかね。
どんなことになっても‥‥お姉ちゃん、あかねのコト大好きだよ。
あたし達が下に降りるとお母さんが起きてソファに座っていた。
お腹をボリボリかきながら、あたしを見て
「麦茶‥‥」
と呟く。

「うん。待ってて、あんたのも作るから」
そいつは嬉しそうな笑顔を見せた。
あたしもニコッと笑顔を返して、キッチンに向かった。


用意するコップは3つ。普通のガラスでできたものを2つ、茶色の湯飲み茶碗を1つ。
冷蔵庫から取り出すのは、市販の2リットルの麦茶、そして辛いもの好きのお母さんがよく買ってくるタバスコ。

そのタバスコを湯飲み茶碗にだけたっぷりと注いで、全てのコップに麦茶を入れていく。
予想通り、茶色の湯飲み茶碗なら少しタバスコの色が混じってもよくわからない。


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