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WAKALE
【失恋 恋愛小説】

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WAKALEー翔ー-2

ピルルル…ピルルル…

電話だ。カバンに入れたままのケータイが鳴った。
正直いつも通りに振る舞える自信は無かったが、一応ケータイを手に取った。
『誰…。』
画面をみると、『浩人(ひろと)』と出ていた。無二の親友からだ。……出るか…。

ピッ…

通話ボタンを押した。

<翔?>
『…ぉう』
<?何か、暗いなお前。>
やっぱバレるか……。
『んー…、ちょっとな。』
<んだよ。今日さ、お前と空ちゃんの記念日のお祝いしようと思ってんのに。てかお前空ちゃんと一緒?>
何も答えられなかった。力なく笑うしかなかった。カバンの中にある、自分の分の婚約指輪。その小さな箱が、悲しかった。
<おい?翔?…空ちゃんと何かあったのか?>
浩人が訝しげに尋ねる。黙る俺の変化に気づいたのか。さすがだよ、お前。
『……頑張ったのになぁ。』
<は?>
『俺さ、珍しくバイトめちゃくちゃ頑張ったんだぜ。いつも、俺の為に頑張ってくれる空の為に、良い指輪買ってやろうと思って。』
<……>
浩人は何も言わなかったけど、俺は話し続けた。
『…結構大変だったんだ。…マジで。就活あったしさ。けどそんなの、へでもなかったよ。……空の事考えればさ。』
<…ああ。>
浩人が優しく微笑んでいるのが見えた。コイツはいつもそうして俺の話を聞いてくれるから。
『…何でかなぁ…。何で…っ……。』
それ以上何も言えなくなった。流れなかった涙が、やっと今になって溢れ出てきた。ケータイがスルリと手から離れて、床に落ちた。その姿が、俺と空の姿を映したようで、悲しかった。
空は、俺の手から離れてしまった。もう二度と届かない所まで、離れてしまった。



『……ぁ…?』
俺は再び目を覚ました。泣き疲れて眠ってしまったようだ。時計を見ると、早朝4時。結構寝たらしい。
床にはケータイが落ちたままだった。それを拾って、パタンと画面を閉じた。
泣いたからか、よく寝たからか、一日経ったからか、頭はスッキリしていた。別れた事を、受け入れられるくらいには、なったはずだ。でもそれは事実として。感情はまだ、ついていかない。
『今日は…、大学だよな。』
カレンダーを見た。もう就職先も決まって、卒業単位も取っているが、部活に顔を出す予定になっていた。
『あ…、郵便受け見てねえや。』
とりあえず、Tシャツとジーパンをはいて外に出た。空気が冷え冷えとしていて、肌に突き刺すようだ。

カタン…

新聞とケータイ料金の請求書、訳の分からない勧誘のチラシと手紙が1通入っていた。宛名はあるが、差出人がない。
(母さんかな…。)
とにかく寒いので、そそくさと家に戻った。
新聞とチラシを無造作に置いて、請求書と手紙を手に取る。まずは請求書。こんなにテンションが落ちている日でも、社会は変わりなく動く。腹も減るし、こんなふうに新聞や請求書も届く。…て、空がいつか言ってたな。
『げっ!1万…!?』
そうだ。今月は会えなかった分、空と電話だのメールだのをたくさんした。
少しため息をついて、次は手紙に手を伸ばす。一体誰だ……?封筒を開け、中から手紙を出した。2枚ある。それを開くと……
『…っ……!』
言葉にならなかった。空からだった。


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