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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ4-1

悦乃、由貴、葵の三人は、大学の帰りに駅前の喫茶店を訪れていた。
「ふぅー♪今日も疲れたー♪」
葵は非常に軽い足取りで席についた。言っていることと行動が正反対だ。
「葵、あんた大丈夫なの?今度の試験」
由貴は凛とした声で言う。
「今度はちゃんと勉強しないと…」
悦乃も小さな声で言う。
「うー…」
三人ともコーヒーを注文し、しばらくの沈黙のあと、葵が切り出した。
「今日のランチ楽しかったね♪」
由貴がその言葉で途端に赤くなる。
「………そうね」
「あれー?由貴ちん真っ赤だよ♪」
葵は誰かのようなケラケラ笑いを見せた。
「違うわよ!熱っぽいの!」
「ふーん♪今度、瞬くんに由貴ちんの昔話聞こうかな」
葵が舌を出す。
「あんたねぇ…」
由貴はヤレヤレと溜め息をつく。
「由貴は……瞬くんのこと、どのくらい知ってるの?」
「え?」
「お♪」
悦乃の突然の問題発言に唖然とする二人。
「……どのくらいって言っても中学からの仲だから……まぁ誕生日とか血液型とか…それくらいよ?」
「………瞬くんに小学校の頃の話とか聞いたことない?」
「ないけど……どうしたのよ」
由貴は多少、混乱している。
「えっちゃん、もう瞬くん狙い?やるー♪」
「違うけど」
「即答かい!」
「…………」
葵が鋭く突っ込む。
「ならいいんだけど……ごめんね」
重い沈黙。
「………なーんだ♪でも…えっちゃん」
「………なに?」
「困ったことがあったら言ってね…そのためのうちらでしょ♪」
葵が優しい声で言った。
「そ…そうよ!話したくなったら言いなさいよー!」
由貴も微笑んだ。
「葵ちゃん、由貴ちゃん…ありがとう」
出会ったばかりの三人は、早くも素晴らしい絆で結ばれていた。


そして話題は再び女の子の“恋バナ”に。
「由貴ちんはもちろん瞬くん狙いでしょー?」
「ちょっと!あんたはそれしか言えないの?」
「由貴ちんまた怒ったー!顔はやっぱり真っ赤のくせに♪ねー!えっちゃん♪」
「あ…うん、バレバレだね!」
二人に言われると由貴はもうお手上げの様子だ。
「もー…わかったわよ…瞬のこと、実は昔からずっと好きだったの!!」
「………」
「きゃー♪由貴ちん白状しちゃった!」
「あんたがしつこいからよっ!!」
由貴は依然、顔を真っ赤にしている。さらには涙目だ。
「一目惚れなの?」
「悦乃まで……まぁ、もういいわ!こうなったら、洗いざらい吐いてあげる!」
由貴は動揺し過ぎてわけが分からなくなっているようだ。
「瞬はいつも無愛想だけど…本当に優しいの」
「へぇー♪」
由貴は目を潤ませながらうつむき、話を続けた。
「中学の入学式の日に、緊張してパニクってたあたしをいろいろ助けてくれたの…それ以来、ずっと好きで…三年で初めて一緒のクラスになってね……」
「そうなんだ…なんかいいね…」
悦乃がニコッと笑った。
「あー!なんかすっきりしたわ!なかなかこういうこと言えないわね」
由貴はアハハと清々しく笑った。
しかし、そこに無情にも葵の“天然要素を含んだ鋭い”突っ込みが……


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