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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*12*-2

「ん〜…暇だけど、お兄ちゃんとか友達とメールしてるからまだマシです!」
「病院てケータイ使っていいの?」
「うん。使っていいスペースあるし、天気いい日はずっとここにいるし、問題ないです」
よく見ると彼女の膝の上には、ビーズのストラップが付いた白いケータイが置いてあった。
「ずっと?今日も?」
「いました」
女の子は今日一日、中庭にいたという。
「友達お見舞い来る時、部屋にいなくていいの?」
明るかった彼女が、急に寂しそうに俯いてしまった。あたしは、いけないことを言ってしまったと思って謝ろうとした時、女の子の方が先に口を開いた。
「アキ、八月末に引っ越してきたからこの辺りに友達いないんです」
「…そう、だったんだ。メールだけじゃ寂しいでしょ?」
『アキ』という名前らしいその女の子は、首を振った。
「お兄ちゃんが毎日来てくれるから、寂しくない」
「そっか…。いい兄貴だね」
「はいっ!」
アキちゃんは嬉しそうに大きく頷いた。


アキちゃんは本当に可愛らしい子だ。整った顔立ちで、人懐っこく明るい女の子。中でも笑顔は特にキレイだった。
「あっ、そういえばその制服…」
「ん?」
あたしは自分の制服を見る。
「もしかして北高ですか?」
「そうだけど…」
アキちゃんはあたしの制服を指差して
「お兄ちゃんの学校の制服だ!」
と叫んだ。
なんと!アキちゃんの兄貴はうちの高校らしい。こんな可愛い子の兄貴か。どんな奴なのか見てみたいもんだ。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
「天野 音羽だよ」
「ありがとうございます。音羽さん、何年生ですか?」
「あたしは三年だよ」
そう答えると、アキちゃんはパァッと顔を輝かせた。
「お兄ちゃんと同じ学年!!」
「まじっ!?…ん?」
アキちゃんは八月末に引っ越してきた。あたしは同じ学年どころか、同じクラスで同じような境遇の奴を知っている。
「もしかして…アキちゃんの名字って…」
「矢上ですよ!」
ええええぇぇぇッッ!!!!っと心の中で叫んだ。なぜ心の中かというと、実際のあたしは衝撃的な事実を知り、驚き過ぎて、開けれる所は全て開け、固まっていたからだ。そんなあたしに追い打ちを掛けるように、聞き慣れた声が聞こえた。
「明樹!こっちにいた…の…か…!?」
駆け寄ってくるその人は、あたしと目が合うと、だんだん速度が落ちてゆき、数メートル先でぴたっと止まってしまった。
「…矢上」
矢上は目を真ん丸にして、立ち尽くしていた。たった今、この場所に来た人は銅像だと勘違いしてしまうのではないだろうか。
銅像が口を開いた。
「音羽ちゃん…何でここに…?」


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