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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*10*-3

あたしも立ち上がって好美に百円玉を渡しに行く。
「ありがと好美、はい」
「はいよー」
好美は財布を取り出す。好美の財布は百円玉で溢れていた。
自分の仕事へ戻ろうと踵を返すと、好美が
「あ、音羽!」
と呼び止めた。あたしは振り返る。
「ん、何?」
「瑞樹とジュース買いに行って思ったんだけど…」
好美が言葉を切った。
そして暫く間を開けてから
「瑞樹ってブランドもんの財布持ってたよねぇ」
「うん、たぶん。何人かあげたんじゃなかったけ?」
この話は好美に聞いたのだ。矢上にブランド製品を貢いだ子は少なくない、と。
「だよね…」
好美は眉間に皺を寄せ、黙ってしまった。
「それがどうかした?」
「…瑞樹の財布、普通の布製の財布だったの。どこにでも売ってるような…」
好美が首を傾げた。
「普通なら喜んで使うよね?」
あたしはまさかと思って、教室内の矢上を探した。
矢上はまだジュースを配っている。財布は制服のズボンの後ろポケットに刺さっていた。
「本当だ」
ここから見る限りでは普通の黒い長財布に見える。
「ね、何でだろうね」
「うん…」
全く…。
矢上が何を考えてるのか、あたしにはさっぱり分からない。


矢上はジュースを配り終わると「用事あるから」と言って帰ってしまった。
結局、なぜ病院に近いからここを選んだのか分からないまま。
…矢上が病気?まさかね。
あたしは自分の考えが馬鹿らしくて、少し笑った。そして、角をよりリアルな見せるために、違う色を重ね塗りし始めた。


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