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【瞬間】
【初恋 恋愛小説】

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【瞬間】-2

トュルルルル、トュルルルル…コール音の数が、私の心臓をどんどん激しくしていく。
「はぃ、もしもし」
(でたッッッ!!)
電話に出たのは彼本人だ。(ぇ〜いッ!!このまま言っちゃえっ!!)
「貴方の好きな人は誰ですか?」
「…えっ!!?」
聞いたのは私なのに、私は急に怖くなった。彼の口からでる名前が私じゃなかったら…そんなのイヤ、聞きたくない。
「私は貴方が好きです。付き合ってくれませんか?」


「僕の好きな人は、貴方です。よろしくお願いします!!!」
完全に理解不能。思考回路は…あぁ、電話をかけた辺りからショートしてたみたぃ。パニックになった私は
「本当に!?ありがとう!ぢゃぁまた明日!!」
とだけ言い残し、自ら受話器を元に戻す。

…ん?私すごく感じ悪くないかい?言いたい事だけ言って、返事をもらったらハイさようならって…でも返事はイエスだったような気が…

(はっ!電話しなきゃ!)私は再び電話ボックスへと向かった。
トュルルルル…
「はいっ!?」
「もしもし!?返事OKだったぁーーーッッ!!まじやばいんですけどぉおお!」電話先の友達は喜んでくれた。本当に、自分の事のように。
何分話しただろうか…顔が緩みっぱなしだ。もう度数もない。私は惜しみながらも電話を切る事にした。
「ゴメンっ!もう度数なぃから…また明日学校でいっぱい話させて〜♪」
「はいはい。今日はお疲れ!また明日ね!」


その後自宅に戻り、夕食を囲んだ席でも最上級に上機嫌だったのは至極当然で。





それから私たちは付き合うようになった。まさにあの日、あの瞬間まで想像もしてない展開になっている。

これから先に予定なんてものはない。真っ白だった。初めての『彼氏』。幼い私はそこがゴールだと思っていた。彼氏・彼女になりさえすれば、自然と仲良くなれるのだと…。

それからはたまに電話をし合い、学校が早く終わった日など時間の都合が着く日に会った。
私がブランコに乗れば、彼は隣にいて話を聞いてくれる。私がベンチに座れば、彼は隣にいて笑顔で応えてくれる。
それだけで、十分だった。他の人よりたくさん、声を聞く事ができる。他の人よりたくさん、笑顔を見る事ができる。一緒にいれる。楽しいなぁ…

そんな関係はひどく暑い夏を迎え、木枯らしの舞う秋になり、周囲の気配が完全に静まる冬がきて、息を吹き返した春が戻ってきた頃も続いていた。ただ一つの変化。暇な授業を受けながら、考え事をしていた時、瞬間的に私は淋しくなった。虚しくなった。

彼は私に本心を見せてくれない。いつも私が話すばかりで、彼は自分の考えている事や思っている事を言葉にしない。態度にもださない。『信じる』なんてまだわからなくて、いつも笑顔な彼を見ると心がチクッとした。


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