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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*9*-2

「で、実行委員の音羽!どうよ?」
爛々と輝くたくさんの瞳が、あたしたちを見ている。これが『無言の圧力』ってやつか。
「…経費の一万円だけでも生徒会に返すなら」
ピーッ!パフパフッ!というBGMに、悲鳴にも近い歓喜の雄叫び。
「でもちょっとタンマッ!」
シンッ…と急に静かになる。この前はならなかったくせに。
「実行委員はあたしだけじゃない」
あたしは、隣でおとなしく座っている矢上を見た。
「矢上のことも考えて」
みんな目線を落とす。
やっぱり…。矢上のことは誘わないつもりだったんだ。
あたしはみんなに目線を移した。
「もし矢上がヤダっていうのなら、あたしも反対する」
誰も何も話さないので、妙にあたしの声が響く。
「たった一人でも、打ち上げに参加しない人がいるなら、あたしは絶対に賛成しない。もし打ち上げをするんだとしても、あたし自身も行かない」
誰も何も言わない。
「そもそも、みんなのために使うって言うからあたしは賛成したけど、一人でも行かないのなら『みんな』じゃない。やっぱ賛成出来ない」
「音羽…」
好美は罰が悪そうにみんなを見渡す。
暫らく沈黙が続く…。
好美がはぁっと短いため息をつくと
「仕方ないな…。瑞樹はどうでもいいけど、音羽いないのはつまんないもん」
好美は眉をしかめながら矢上を見
「実行委員の矢上瑞樹、どう?」
と問う。
矢上は少し困ったように笑うと
「いいと思うよ」
と言った。
「ぅ、うおぉぉ!」
樋口が無理矢理テンションを上げると、みんなも奇声を発す。
「売り上げんぞぉ!」
『オォーッ!』
「びた一文払わねぇぞぉ!」
『オォーッ!』
「やるぞぉ!」
『オォーッ!』
「やるぞぉ!」
『オォーッ!』
団結するクラスを見て、どこぞの怪しい宗教か!と、あたしは小さな声でツッコんだ。
不意に耳元に矢上の囁く声がした。
「何であんなこと言うの」
矢上、少し怒ってる。そりゃそうだろう。ついさっき、同情されたくないとあたしに言ったばかりだ。
だけど、今は同情だけが理由じゃない。
「確かに、あたしはみんなと矢上が仲良くなれるようにしてあげたかった」
「だから、そういうのオレは…」
「でもね、それだけじゃないの。あたし、みんなが団結してるの見て嬉しかった。今まで、あたしたちのクラス、こんなに仲良くなったことないの。男女で何かギクシャクしてて…」
みんなの方を盗み見ると、まだ『オォーッ!』とやっていた。
「でも、みんな仲良さそうで嬉しかったの。何でか分からないけど…。クラス全体が仲良いって、なかなか無いと思う。だから、その中に矢上もあたしも入ってたいの。このままいけば本当に、最後にはみんな笑顔で『成功した』って言えそうだと思ったの」
「…そう」
「それにね」
「まだあんの?」
「あんの。それにね、誰かが嫌われてるまま、卒業したくない。あたしの最後の高校生活、気持ち良く終わりたいの」
「そっか…」
あたしはこくんと頷いた。


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