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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*9*-1

学校に着くまであたしたちは一言も話さなかった。
いや、正しくは矢上の「あっ、見て見てぇ。すずめぇ〜!」という、極めてしょうもない話に、あたしが何も返さなかったのだ。


「ただいま…」
ガラッと教室の扉を開けると、いつも綺麗に並べられてあるはずの机が後ろに下げられ、広いスペースができていた。
その光景にあたしは驚く。あの野性児のような好美と愉快な中間たちが、こんな気の利いたことをしてくれているなんて、思ってもみなかった。
「おかえりぃっ!」
何人かが返してくれる。
「よし、天野たち帰ってきたから早速始めんぞ!」
樋口がパンパンと手を叩くと一斉に
「はぁーいっ!」
とみんなが手を挙げた。
え?え?この連帯感は一体何!?どこから湧いて出てきたの?と、あたしは困惑した。
取り敢えず、好美を手招きする。
「何、音羽。どしたの?」
「何でみんなして、やる気に溢れてんの!?この超協力的な態度何!?」
「何でって…ねぇ?」
「いやいや、聞いてるのこっちだし!」
「何って言われても…ねぇ?」
あたしは、苦笑する好美のおでこをペシッとはたいた。
「だぁから、あたしが聞いてるんだっつの」
好美はおでこを擦りながら、渋々話し出した。
「実はぁ〜…、買い出しに行かせといてこんなこと言うのも、どうかと思って言いづらかったんだけどね…」


好美の話をまとめるとこうだ。
あたしたち二人を買い出しに行かせることで、クラスが一致団結。
あたしたちが出発してから、暫らく話し込み、会話に華が咲く。
何人かが机を全て後ろに下げ、みんなで床に座り込み輪になって、ますます話は盛り上がる。まるで、季節外れの花見のようだったと、樋口は言っていた。
飲み会と化した教室。一発芸までしたオバカもいたそうだ。
そんな時、アルコールも入っていないのに、ハイテンションになった好美がこんなことを言いだしたのだ。

『みんなで文化祭の打ち上げしちゃうぞぉーッ!!』

そんな一言から花見は会議へと変化した。
まるで、大手企業の白熱した議論を交わす会議室のようだったと、雅博は言っていた。
まぁ簡単に言うなら、先日あたしたちが行なった話し合いとは正反対だったらしい。
そして、その話し合いで以下のことが決まった。
?コテージを借りて自炊
?一泊二日
?一番広い二万円の部屋
?費用は全額、文化祭の売り上げから


「ちょっ、ちょっと待って!」
そこまで聞いて、あたしは好美の口を封じた。
「?明らかにおかしいでしょ、?!」
我が校は、文化祭で売り上げたお金は全て生徒会へ差し出すという決まりなのだ。
「決まりあんでしょ、決まりが」
「そんな決まりなんか…余裕だもんねぇー」
好美が親指を立てると、あたしたちの周りに集まっていた群れの中から岡田が現われた。
「会計報告をチョチョッといじくりゃ、誰にもバレねぇって」
すると岡田に続けとばかりに
「自分達で稼いだ金、自分達で使わないでどうすんの!」
「何にも悪いことしてないしー!」
「みんなのために使うんだからいいじゃん!」
と言う声が聞こえ『ワァーッ』と天高く拳が突き上げられた。
この協調性の固まりをあたしに壊すことは出来ない。どんな理由であれ、目標に向かってみんなで力を合わせてるんだから。


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