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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-5

『羨ましいわぁ………』
となり同士の席で楽しそうに会話する二人を、フィルがじっと見ていた。
『料理長さん、ペペロンチーノ頂戴。』
そんなフィルに構わず注文をする私。
『はいな………あぁ、羨ましいわぁ。』
羨望の眼差しをスー達に向けた後、厨房に入り注文の料理を作りだす。
しばらくして、出来立てのペペロンチーノが盛られた皿を片手にフィルが戻ってきた。
『はいな、おまちぃ、ペペロンチーノ。
………羨ましいわぁ………』
再びスー達を見た後、今度は私をチラリと見た。
『ありがとう。』
やはり、そんなフィルを無視して私は皿を持ち、席に向かおうとした。
だが急に肩をフィルにガッチリと掴まれ、危うく皿を落としそうになってしまう。
『………なんでかって聞いてぇな、アルネはん。』
すがるような目で私を見るフィルに、仕方なく訳を問うと嬉しそうな笑顔で話だした。
『そないに聞きたいなら聞かせたる♪
あの二人〜………憧れなんよ、うちの。 紅館で三番目に羨ましいカップルなんよ。』
フィルの言葉に首を傾げる。
どんな所が憧れなのだろうか? というか、三番目って。 一番や二番もあるのだろうか。
『だってなぁ、女と女やんか♪』
『はぁ?』
再びフィルの言葉に首を傾げる。
『禁断やわぁ………♪ 女と女の深い恋………♪』←フィル=ハン=バーグ 26歳独身料理長禁断の恋大好き御相手募集中。
『…………あぁ。』
『な、なんやねんその、「あぁそういえばこの人こうだったわね」て感じな目は!?』
まさにその通りの目をしている私をよそに、鮭を半分位口に頬張ってるゼロを見つめるフィル。
『ちなみに、二位と一位は?』
ちょっと気になったので聞いてみると、またまた嬉しそうに喋りだした。
『二位なぁ♪ シャナはんと旦那様やで♪』
ほぅ、あの二人に禁断要素が。
『旦那様とメイド………
いけません旦那様! 奥さまに叱られます!
よいよい、それともメイドのくせに主人の命が聞けんのか?
そ、そんな………あ、駄目………あぁ〜〜〜〜………』
素晴らしいサイドステップで左右の場所を変えて一人二役をこなすフィル。
だが、特に関心が無い私にはまるで意味が無かった。
(ペペロンチーノ、伸びちゃうわね。)
さっきまで美味しそうな湯気が立っていたが、今はそれほど立っていないし、見た目にも少し美味しさがなくなってきた。
それでもフィルは止まらずに一位の発表へと自己進行していくのであった。
『一位なぁ〜、ん〜、聞きたい? 聞きたいんか? アルネはん?』
『私は別に………』
『ん〜、そない言うんなら聞かせたるわぁ♪
一位はなぁ、ハイネルシスはんとクリスはんなんよ♪』
ノンストップ・フィルのお喋りはまだまだ続くようだ。
『うちなぁ、ちょっと噂で聞いたんよ。 あの二人、元お姫様とその護衛騎士みたいなんよ。
もうっっっストライク♪♪』
ぐっと親指を立てて会心の笑顔を浮かべるフィルに、何が? と聞きたかったが、話を長引かせる恐れがあるためやめておいた。
ただ聞くしかないようだ。 私はフィルに一位と二位を聞いたことを激しく後悔していた。
私が完全に伸びたペペロンチーノという昼食を食べれたのは、さらに続くフィルのお姫様&護衛騎士の大妄想話(前編・後編各一時間半)を聞き終えた後となってしまった………


ドサッ―――
自室に戻った私はまずベットに寝転んだ。
『うぅ〜〜……話が長かったわね。 良かった、今日はもう仕事が無くて。』
いや、場合によっては仕事があった方がそれを理由にして抜けられたかも知れない。
時刻は三時前、夜までまだまだ時間がある。
そういえば、シャナはどうしてるだろうか?
流石にもうウェザとは居ないと思うが………彼女にも仕事があるのだから。
寝転がった体をまた起こして、立ち上がる。 なんだか普段より忙しい気がする。


廊下を歩いてシャナを捜す。
紅館も夕方に近付きだし、メイド達も早い者は仕事を終えて休んだり遊んだりしていた。
だがシャナの仕事場は綺麗に仕事が終っているし、ウェザの部屋にもシャナの姿が無い。
どこに行ったものかと思い、考えるとある事を思い出した。
食堂の厨房、たぶんそこに居るだろう。
今、シャナはフィルからお料理を教わっているのだ。


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