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ピアノ
【同性愛♂ 官能小説】

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ピアノ-4

「先生、なんで教師になろうと思ったの?」
「聞きたい?」

試すような言い方。でも、いつもの意地悪い顔じゃなくって、真剣な表情。
俺、変な事聞いたかな?
こくんと頷く。
そういう風に聞かれると、逆に気になる。
「何となく、だ」
そんな訳ない。
今の表情は、『何となく』なんて雰囲気じゃない。
それぐらい、俺にだって分かるよ。
「…嘘吐き」
「本当だよ。気まぐれだった、こんなの。ピアノだって、大嫌いだったし」

嫌い?先生が?
ピアノを?
「なんで…」
「父親がピアノ講師だったから、小さい頃から弾かされてた。嫌だって泣いても、泣いても…」
一瞬止まった後、先生は話し続けた。
「それでも、最初は好きだったよ。弾いてると楽しかった。でも…その内何の為に弾いてるのか分かんなくなった。ただ、弾く事が辛かった。そういうのって、演奏に出るんだよな。親父にも『お前には、何かが欠けてる』とか言われて、ますます弾くのが嫌んなった。ま、我が儘だったんだな…。…」
そこまで言って、先生の話が止まった。

「…で?続きは?」
「もう終わりだこの話。俺も何話してんだか…」
しまったという様にネクタイを緩めて、髪をかき上げる。
「いいじゃんっ。なんで止めんだよっ!」
「中二ん時親父と喧嘩してそれから弾くの止めた。これでいいだろ?はい終わり。」
なんだかこれ以上聞いても、話してくれなさそうだから質問を変えた。
「なんでまた弾く気になった?」
「好きな女に逢うための口実。その人、音楽教師だったから。どうにか気引きたくて、な」
教師と生徒か…。しかも音楽教師。何か引っ掛かる。先生が同じ職業に就いた事とは関係ないんだろうか。
「振られたけどな」
そう、付け加えた。
「…どんな人だった?」
「弱い人だったよ。心がな。俺が支えてやらなきゃいけなかったのに、追い詰めちまった」

先生の話は、どっか曖昧だ。

良く分かんない。『支える』って、振られたのに?
付き合ってたのか?
疑問ばっかり浮かんでくる。

まただ。
もやもやする。

「どうした?塞ぎ込んで。話つまんなかったか」
先生の手が前に伸びてきたかと思うと、頭を撫でられた。撫でられんのは嫌いじゃない、けど…‥

「大森、お前猫っ毛だな。あーあ、脱色するから髪痛んでる。勿体ねー…」
「べっ別に…髪なんか、どうだっていーよ…っ」
バッと下に俯いた。
ヤバい。
顔上げれない。
俺、絶対顔赤い。

急に撫でられたからビックリしただけだ、と自分に言い聞かせる。

落ち着け、落ち着け…
京吾に頭撫でられても平気なのに…変だよ、おかしい。どうしたんだろ俺。


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