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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*7*-1

ガラガラと、あたしは職員室の扉を開けた。
「失礼します」
小さく呟く。
文子先生の席は扉に一番近い席だ。だからあたしからは、入るとすぐに文子先生の後ろ姿が見える訳だ。
あたしは先生の背後からゆっくり近付く。
「先生、報告に来まし…た…!?」
振り返った先生を見て、あたしは驚愕した。
「ふぁ、音羽ふぁん!」
開いた先生の口から悪役プロレスラーの吐く毒霧のごとく、白い粉が吹き出した。
「あの…先生…それ、大福…?」
あたしは先生の手に握られている白い物体を指差す。
「ん?」
その物体をちらりと見
「ふぉうふぉう!だいふふ!!」
と嬉しそうに頷いた。
「今日お見えになったお客様にいただいたの!」
口に粉を付けながら、ニコニコと微笑む文子先生。
「本当はそういうの貰っちゃいけないらしいんだけど、せっかく持ってきてくれたんだもん。貰わないと相手にも失礼かと思って!あ、一個食べる?」
差し出された箱には大きな大福が三つ入っていた。だけどどうやら、この箱の大きさから元々は六個入っていたと見た。
この人はこんな小さな体で二つもたいらげ、その上まだ食おうというのか。
「いらないの?」
「あ、じゃあ貰います!」
どうしてあたしは笑顔で貰ってしまったのだろう。
先生の言うようにせっかくくれるんだから、貰わねば!!と思ったのだろうか?
あたしの右手にぴったりと納まっている大福を見て、はぁっと短い溜息を吐いた。
「で先生、報告なんですけど…」
「そっか!そうだったわね」
先生は手に持っていた大福をモフンッと口の中に詰め込んだ。
「ふぁい、どうじょ!」
パパパパッと両手を叩き合わせて粉を落とすと先生はボールペンを握った。あたしはそれを確認してから、決定事項を述べていった。
「バイキング風の喫茶店に決定しました。喫茶店なので、ドリンクとデザートぐらいはオーダーを取ります。準備は基本的には全員でやりますが、店内のデザインは数人に任せています。来週から本格的に動きだす予定なので、その人たちにも来週まででかしてくるように頼んでいます。当日は買い出し係、調理係、接客係に別れるので、そのグループを印した紙がこれです」
あたしは一枚の紙を先生に渡した。
「これは先生の分です。もう一枚あるので、明日コピーしたのを皆に配ろうと思ってます。それと、調理係が当日を迎える前に試作したいらしいんですけど、調理室確保出来ますか?」
「うん。前日に予約してれば大丈夫よ」
「そうですか、ありがとうございます。以上が今日の決定事項です」
「分かりました」
先生はボールペンを机の上に置くとあたしの方へ向き直った。
「それにしても、すごいわね。まさかこの短時間でここまで出来るなんて!関心しちゃった。私でもここまで出来ないもの」
そりゃ、口の周りを白くしている先生よりは幾分かマシだ。
だけど、これはあたしの成果じゃない。
「これ、あたしじゃなく矢上がやったんです」
「えっ!?」
先生は嘘ぉ〜!と口を押さえたが事実である。
「ホントです。実は、さっきの決定事項も矢上が最後にまとめたことをそのまま言っただけなんです」
苦笑するあたしを見ながら先生は「へぇ〜…」と今だ信じられなそうに何度も頷いていた。


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