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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-2

「だ、誰だ!あんた!どっから入ってきた!」
やっと声が出た。心霊番組に影響されすぎた。こいつはその類じゃない。
「やっと。しゃべったね。」
女はすこし口元を緩めた。
「でも、ちょっと言い方きつくない?仮にも、女の子にあんたって・・・」
「関係ないだろ!今から警察に電話するか−」
「無駄よ。」
僕の言葉をさえぎって女は言った。その意味が僕には理解できなかった。
「だって、あなた以外に私は見えないもの。」
「は?」
「所謂・・・」
女は少し間を置いた。顔が一瞬悲しげに見えた。
「幽霊ってやつ」
「・・・そのわけないだろ!」
 僕は女の腕をつかもうとしたがその感触は無かった。そこには感触どころか女の体すらなかった。
「ほら、ね。」
女の声が背後からした。僕は慌ててふり返ると僕の2メートル程後方に女が立っている。
「今どうやって・・・」
一瞬で人間がこの距離を移動できるものなのか?しかも、本棚と僕をすり抜けて。
「こうやったのよ。」
女はそう言うと僕の目の前から姿を消した。そして、不意に後ろから誰かに押された。振り向くと本棚と僕の間に女が立っていた。
「まさか・・・」
僕は俄かには信じられなかった。でも、目の前に起きたことは事実なのだ。一瞬夢かと思ったが、このリアルな感触は現実だ。
「信じた?」
 「・・・。」
僕は何も言わずその場に座った。そしてテーブルの上のハイライトに手を伸ばして煙草を一本取り出した。とりあえず、現実逃避したかった。現状を落ち着いてふり返りたかったのもある。
 「あれ?変だな?」
 煙草に火をつけようとしたのだがライターがつかない。ガスの残量はまだ十分ある。違うライターで試してみるがやはり結果は同じだった。
 「煙草は嫌いなの。」
すると女いつの間にか僕の前に座っていた。
 「あんたがやったのか・・・」
 「まあね・・・何故か煙草の煙はダメなのよね。気分悪くなるとかじゃなくて、もっと、違う次元の嫌さって言うか。」
 「便利な力だな」
 僕はふと幽霊三か条を思い出した。
@幽霊は煙草の煙が嫌い
 (まさかな・・・)
 でも、これが有効であるならば、もっと恐ろしいことを二つ目では物語っている。
A幽霊は一度憑くと離れない

 「あんたは何故ここにきたんだ?」
 「さあ?自分でもわかんない」
 俺はふっと胸をなでおろした。どうやら、ここに来たこと自体気まぐれらしい。
 「じゃあ、要するに取り憑いたってことではないんだな?」
 「ああ、そういうことが聞きたかったわけね。幽霊って最初に見た人間から離れられないんみたいなんだよね」
 「そうか、じゃあ、その人の所に、その、取り憑いてるわけだな。」
 「そう、あなただけどね。」


 僕は耳を疑った。
  「ちょっと待て。あんた、さっき最初に見た人間って言ったじゃないか。」
  「だから、あなたが最初に見た人間なの。」
 僕は女の言葉が信じられなかった。
  「つまり、こうか?あんた最近死んだのか?」
 最近という言葉がこの場合最適どうかわからないが、僕はそう解釈した。
  「そんなことないはずなんだけどね。ただ、こんな状態になってからはあなたが最初の人間ってことになる。説明はし難いんだけど。」
  「そうだろうね・・・」
 たとえ説明されても僕にはわかりそうに無かった。彼女は所謂“あの世”の住人であるのだから。
  「それより・・・あんたあんたってさっきから人のことを・・・やめてくれない?私にも名前があるんだから!」
  「幽霊1号とか・・・まさか、通し番号とか?」
  「そんなわけないでしょ。ルイよ。次からはルイで通して」
 それは生前の名前かと聞こうとして飲み込んだ。そんなこと聞いても無駄だからだ。


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