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微笑みは月達を蝕みながら
【ファンタジー 官能小説】

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微笑みは月達を蝕みながら―第壱章―-11

――殆ど全てがモノクロームの部屋で、『主人』と『使い魔』が会話をしている。

「何を考えている、主人」
「何をって、特に何もないけど。どうしたの、突然」
「……何もないのに、あのガキに『催眠』を使ったのか?」
「あら、やっぱり『察知』を持ってる貴方は気付いてたのね。……でも白も気付いてるでしょうね、あの子は敏感だから」
「何を考えている、主人」
「……別に、貴方が考えてるような深い理由はないの。それにそんなに強く『催眠』をかけたわけじゃない。私は“仲良くしてあげて”って言っただけ。白はね、奥手だからちょっと応援してあげよっかなって。それだけよ」
「それだけ、か」
「…………」
「たかが使い魔に話すほどのことでもない、か」
「……拗ねてるの?」
「まさか。主人の判断に異議を持つ程、俺は腐っちゃいない。主人が話さないというなら俺はそれに従う」
「…………」
「ただ、信用されるほどの『力』を持っていない自分に腹が立つだけだ」
「……真面目ね、シンは。もっと楽に考えた方がいいわ。本当に大した事じゃないんだから」
「…………」
「私はね、あの子の事が気に入ってるの。“心”は私にはないものだから。何百年生きていても、あの子は純粋なそれをずっと持っているから」
「だから、応援すると?」
「……私はね、シン。きっと白のことが好きで、多分本当に大好きで――」
「…………」
「だから、ドロドロに甘やかしたくなるし……」

 ――ぐちゃぐちゃに、踏み躙りたくなるの――

「…………」
「まあ、昔はそうだったのよね」
「………今は、違うのか?」


『主人』は“微笑んで”、答えない。


「さあ、私は明日バイトがあるから。……白は明日も起こしてくれるのかしら。中華鍋はやめてほしいけど……」
だからシンも、そんな呟きには答えない。
この部屋には窓が無いので、月は見えなかった。
レンはそれを、少しだけ残念に思った。
本当に、少しだけ。


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