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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつてジュンかく語りき3-1

私は、村井純子。
ついに!選挙権を持つ、ハタチになった。
幼い頃に抱いていた成人のイメージとは、はるかにかけ離れた現状ではあるが、それはソレだ。
思ったより、大人は楽しくって、キビシい。

大学はというと、長期夏期休暇に入った。時間はあれどお金がない貧乏学生にとっては、殺人的な長さだ。ユエに、何をしようかな……なぁんてのんびり構えていると、昼夜逆転し怠惰な日々を送るに終始してしまうことが多い。現に、昨年の私の夏期休暇はそうであった。
今年はその二の舞をせぬように、私はプチ遠出旅行を計画していた。勿の論、「まいだーりん」とのプランだ。
……ということは、先立つ資金を調達せねばナランっちゅうわけで。

かくて私は今、件のクレープ屋さんで働いている。家からも学校からも近いワリには穴場であり、何よりオヤツ付きなのが魅力だった。
からん
涼やかなドアベルが店内に響き渡り、途端に私の身体に緊張が走る。
「いらっしゃいませ」
私は人よりやや低めな声のため、落ち着いたフンイキに見えるそうだが、実はモノスゴク緊張していたりする。
「ジュン〜」
ひらひらと手を振りながら、クミコがやって来た。オレンジティー色に染め上げたボブが、朗らかな彼女の雰囲気とよく合っている。
「イイ色だな」
他にお客もいなかったことから、私はほっとして口元を緩ませた。クミコもにっこり笑って、
「夏仕様よ。かわいいじゃろ?」
そして、くるりと回ってみせた。肩の辺りで弾む毛先がかわいらしい。
いかにも、オンナノコって感じだ。
「ああ、いいな。私も染めてみようか」
仕事用に、ひっつめた味気ない黒髪をくいと引っ張ってみる。手を放すと、私の髪はまっすぐすとんと落ちた。まるで、クミコのそれには敵わない。
当の彼女は、ほんわりと笑みを浮かべていた。
「髪で遊べるんも今年までじゃけね。来年は就活じゃし」
迫り来る社会の荒波を思い、私がうぅむと唸ると、彼女も一緒になってムゥと唸った。
かろん
遠慮がちにドアベルが鳴り、タキタが飛び込んで来た。
「茅野さん、ごめん!」
髪の乱れを整えながら、彼はぺこりと頭を下げた。余程急いで来たのだろう。呼吸をする度に肩が大きく揺れ、額には玉のような汗が吹き出していた。
「……遅れ、てしまいました」
彼は息を切らせながらの謝罪に必死で、私のことに微塵も気づいていない。
……タキタは良くも悪くも、集中力がありスギる。
「あたしも、今着いたところなんよ」
それを見たクミコは、いつもの調子で手をひらひらさせながら笑った。
そして、二人はクミコお気に入りの席に腰掛けた。客観的に見ると、お似合いなカップルにしか見えないから不思議だ。
「……ん?」
何だか、妙に胸がざわつく。もやもやしたモノがじわじわ広がっていく感じ。

私、何かヘンだ。
このままじゃ、イカン!

頭をぶんぶか振って、無理やりいつもの村井純子にリセットさせる。手早く二人分のお冷やを用意し、テーブルへサーブしてから、お決まりの文句を並べた。じっとメニューに見入っていたタキタが、ゆっくりと顔を上げる。
私はすでに、営業スマイルを用意していた。
「いらっしゃいませ」
嫌味な程に、にーっこりと。
この時にして、タキタはやっと異変に気が付いたらしい。
「ジュンっ!!?」
がばあと椅子から立ち上がり、私とクミコとを互い違いに見つめた。彼女はというと、声をかみ殺して真っ赤な顔をしている。
「えっ!?ど、どういうことですか?」
当のタキタも恥ずかしさからか、頬を紅潮させている。私とクミコが答える代わりに、
「やあ、久美子ちゃん。滝田くん」
いい塩梅で藤川さんが声をかけた。
「藤川さんっ!こ、これはどういう……?」
慌てふためくタキタを見て、藤川さんはあっけらかんと答えた。
「純子ちゃん、ウチで働いてもらってるんだよ?」
ぱくぱくと口を動かすだけのタキタに、私はとびきりの笑顔で応えた。
「ご注文はお決まりでしょうか」


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