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『sick for ×××』
【若奥さん 官能小説】

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『sick for ×××』-9

海には幾人かが入っていた。
板をうまく操り、波に乗っている。
「俺も早く乗りてー」
陽はサーフィンが趣味。休日には欠かさず海へ行っていた。
わたしもたまに同行した。
何をするというわけではないけど、海は嫌いじゃない。
去年の秋口に、陽の冬用のウエットスーツは破れてしまい、寒い冬の間はお預けだった。
「もうすぐあったかくなったら入れるよ」
春先といえど、海の水はまだ冷たい。
「ボーナスで板買ってもいい?」
「ウエットスーツの方、先に買いなよ」
「どっちもほしい」
わたしはこつんと頭を小突いた。
どちらも安価な物ではない。家計を預かる身としてはシビアに考えなくては。
この海は夏は海水浴場としても利用者が多く、道やトイレ、ベンチなどきれいに整備されている。
わたし達は海岸に沿って並んである階段に腰を下ろし、行きがけにお弁当屋さんで買ったサンドイッチとお弁当で昼食にした。
砂浜を隔てて、海は少し遠くにあったが潮騒は聞こえていた。
「海で遊べるのは何歳くらいになってからかな?」
おにぎりを口にしながら陽が言った。
「うーん、今年の夏はとりあえずムリだろうけど、来年になったらどうなのかな?大丈夫じゃない?」
「俺が波乗ってる間に泉と一緒に海で遊べばいい」
その目は海をとらえていた。
ワイプアウトした誰かが派手に波しぶきを作って波間に消えて、浮かんだ。
…はやく海に入りたいんだ。
うまくやりくりできたら、ボードもスーツも買ってあげようかな…。
「俺が波に乗ってるとこ見て、子供が『お父さん、カッコイイ!』って言ってるんだ。そーゆーのよくねー?」
「でもそんなうまかったっけ?」
こんどはわたしが小突かれた。
「それか、俺が教えてやるんだ。んで一緒に波乗んの」
「やだー。そしたらわたし、一人でぼーっと見てるの?」
「泉もやればいいじゃん。ボディボードでもさ」
「泳げないの知ってるくせに…」
わたしはぶすっとして、サンドイッチを口に押し込んだ。
「俺まだ泉の水着姿見たことない…」
ぽつりと言った。思わずむせる。
「…見たいかな?」
「見たいよ」
「やだ。はずかしいもん」
ごそごそとお弁当のゴミを袋に詰める。
「ケチ」
「だ、だって着るにしたって来年の夏まで着れないよ?」
「別に夏じゃなくたっていいよ。ウチの風呂じゃ狭いから、ラブホの風呂とか、内風呂ついてる温泉とかでさ」
なんでそんな必死なのようっ!
「と、とりあえず、今年はムリだからねっ」
「やっぱビキニ?」
「…持ってるのはそうだけど…」
「見てぇ〜」
くぅぅっと拳を握る。男ってば…。
「下着とあんま変わんないじゃん…」
「全然ちがうよ。俺、海でやってみたいもん。水着着せたまま浜辺とか」
「えっちなことばっかしか考えてないんだからっ!」
「でもやってみたくない?」
「そりゃ…少しは」
「やっぱ俺らそーゆーとこ合うよな…」
うれしいんだか悲しいんだか…。


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