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純情純愛無垢可憐宣言
【ボーイズ 恋愛小説】

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A〜試験どころやあらんやろ篇〜-2

でかい建造物を前にし、思わずぽかん、と口が開く。
「お前って金持ちの子ぉやったんか……」
目の前にばばーんと門。そして左右に広がる壁。奥に屋根瓦が見える。日本建築ってコレのことやねんなぁ…。
「何ぼーとしてんだ。早く入れ。有理には一秒も無駄にする時間なんかないぞ」玉砂利を踏みしめ玄関に向かう。20メートルほど先に引き戸が見える。おれの大阪の家やったら門開けて3歩でドアやわ…。
戸を開けると品の良さそぅなおばぁさんが笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。黛樹さま」
「ただいま」
そのおばぁさんは黛樹の後ろのおれを見つけると、満面の笑みになった。
「こ、こんにちわ」
「まぁまぁ、いらっしゃいませ。お友達がいらっしゃるなんて久しぶりですこと!後でお部屋にお茶をお持ちしますね。お友達はコーヒーと紅茶どちらがよろしいかしら」
「こ、紅茶お願いします」「かしこまりました。それでは失礼いたします」
パタパタと廊下の奥に消えていった。
「今のは幸子さん。オレが生まれる前から家の事をして貰ってる人」
「へぇ〜…」
ほんまにお手伝いさんを雇う人っているんやなぁ…。「なんかお前すごいなぁ」黛樹はちょっと嫌な顔をした。
「別にオレがすごいんじゃない」
一言いって階段を上がりはじめた。何か怒ってる?おれ変なことゆぅたんかな…。
「どうぞ」
案内された部屋は、外観とはうってかわって洋風。手前に小さなテーブルセットがあり、奥にソファとガラスのローテーブル、衝立てみたいなものの向こうにベッドが見える。壁一面に備え付けの本棚があり、飾り棚みたいなとこには小瓶が並んでいる。
 「ふわ〜ひろっ。この部屋のなかにおれの実家が入るわぁ…」
ちょっとしゅーん…。
「何ゆってんだ。教科書とノート出せ」
「へいへい」
椅子に腰掛けるが、何だか落ち着かない。
「黛樹ぃ。おれ、テーブルあかんわぁ」
「どした?」
「おれ、実家も今の部屋も卓袱台みたいなやつで食べたり宿題したりしてるから、落ち着かへん」
「じゃあソファいくか」
ソファの前に正座する。
「クッションもってくるか?」
「や、敷もんふわふわやしいけるで」
床暖やし何か眠たくなるわぁ……。
 すぱーんっ
「ぃだっ」
教科書でどつかれた。
「まだ始めてもないのに…油断も隙もないな。有理は追試や補習どころか、進級も危ないぐらいなんだからな」
「せやな、気合いいれんと。よろしくお願いします〜」
「はいはい、わからないとこがあれば聞いて下さいな。じゃ、まずはオーラルからな…」
 ………あれ?何で?わからへんとこめっちゃあるんやけど…。
「…お前、本当に、うちの学校の試験に受かったのか?」
おれの問題集を覗きこんだ。
うぅ…。
「一年の時より馬鹿になってとしか思えない。単語抜け落ちてるし…。これなんか中学生でも読めるって…」
うぅう…すみません…。一年時は必死に勉強しててんけど、最近妙に慣れが出てきてもぅて…すっかりサボってた。
「じゃあ、高1からやり直すか…。1日2教科やっていって試験前日に擬似テストをしよう。…はぁ。馬鹿な友人もつと疲れるな」
「なんやそれぇ…。ってか、おれに付きっきりやったら黛樹が勉強でけんやん?」
「試験前に慌てて勉強しなくちゃいけないような馬鹿じゃない」
あ、そぅですか。そうですね。そういえばおまえは頭良かったよ。口悪いけど。「顔も運動神経も、ついでに性格もいいぞ」
にっこり。
「はいはい、どぅも」
…わかってるって。普通はここ迄面倒見てくれへんもん。おまえはほんまにいい奴やっちゅうねん。友達としてやってくれてるのはわかってるけど、他のやつにはここ迄せぇへん。特別扱いが、すごく嬉しい。
「何にやにやしてんだ。今から勉強漬けなんだぜ。有理は馬鹿っていうだけじゃなくってMの素質まであるのか。才能の塊だなぁ」
それにしても口悪すぎ…。


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