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純情純愛無垢可憐宣言
【ボーイズ 恋愛小説】

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A〜試験どころやあらんやろ篇〜-1

 期末テストが危うい。

テストを一週間後に控え、おれ、佐々有理(ささ・ゆうり)は、絶望のあまり机のうえにつっぷせた。元々、バスケがやりたくて無理して受かった学校だ。おれの本来の学力じゃあ全然足りない。死ぬほど勉強しないと全教科赤点でもおかしくないのだ。結局怪我の所為でバスケが出来なくなり、本末転倒、何しに東京迄来たのかわからない状態に陥ってしまっているが…。
「冬休み、補習で潰すんなんかごめんやわぁ…」
背後から声がした。ふわ、と甘い香りが鼻をくすぐる。
「お年玉送って貰うくらいしかおまえのイベントってないし、別にいーんじゃねぇ」
…この、憎まれ口をたたく長身のこの男、名前を黒野黛樹(くろの・たいき)という。椅子をひき隣の席に座った。無造作に投げ出した足が恨めしい。本人曰く、足が長いせいで、投げ出す形にしないと座れないそうだ。疑わしいが、見る限り嘘ではない気がする。
「残念でしたぁ。今年は大阪帰るっちゅうねん」
黛樹が、え?ていぅ顔をする。
「去年帰らんかったから親がうっさいねん。ねぇちゃんとこにこどもも生まれたしな」
ここなしか黛樹の顔が曇ったような気がした。
「こどもね…」
「好きか?」
真顔で答える。
「すげぇ嫌い」
でしょうね…キャラ的に。 …と。そんな少し未来の話よりも
「てーすーとぉお……」
いつもやばいけど、いつもより増してやばい。あぁ、こぅいぅ時は
「黛樹ィ〜…お前の綺麗なノート貸してぇやぁ」
かすかな友情に頼る作戦。露骨に嫌な顔をされる。
「断る」
「お願い!おれの親友はそんな冷たい男ちゃう筈や」
 (親友やなんて、微塵も思てないくせに)
心のなかで自嘲する。

「……」
呆れ顔の黛樹は帰り支度をはじめてしまった。
「ひ、ひどい…」
おれがうちひしがれていると、上から声が降ってくる。
「ばーか。おまえの家いくぞ」
何の事かわからずきょとんとしていると、おれのかばんにまで教科書を詰めだした。
「おまえんちいって勉強すんの」
「…なんで」
まだわけのわかんないおれに、黛樹は舌打ちしながら「ノート丸暗記しても何の意味もないぞ。すぐに抜けてくからな。きちんと理解しないと、今覚えてもおまえの頭じゃテストまで記憶がもたないだろ。わかったか?」
と言った。
すごーく馬鹿にされた気がするが、それよりもっと引っ掛かる言葉があった。おれんちに来る?あの、おっそろしく汚い部屋に黛樹が来る?…それはやばい!
「ぜっったいあかんあかんあかんあかんっ!!」
あまりの剣幕に、黛樹は2、3歩下がった。
「そ、そんなに嫌なら別にオレん家でも…」
「よっしゃ、それいこ!」ぐいぐい手を引っ張る。おれの部屋なんかとんでもない。あんな汚くて狭い部屋に黛樹がくるなんか…!
靴箱まできた時、黛樹が口を開いた。
「…有理、手をはなしてくれないと履きかえられないんだけど」
「ぅわわっ!ごめんっ」
慌てて手を放す。恥ずかしっ!おれ何してんねんっ。顔がカァーと赤くなってるのがわかる。めっちゃ手ぇ握ってもた。手ぇおっきいなぁ…指細かったなぁ…。 …と。お察しの通り。おれは黛樹に恋心を抱いている。不毛だとわかっている。けど、好きなもんはしゃあない。とまらんもんはしゃあない。どうせきもい扱い受けるだけやし、気持ちを黛樹におしつける気なんかない。友達として隣にいることくらい許されると思うねん。


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