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金木犀の誘惑
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金木犀の誘惑-13

突然の退社に驚きを隠せないでいます、君の取り巻く環境に何が有るのか知る由もなく、又知る権利も無い僕だけど、迷惑じゃないなら、君の真意を聞かせて欲しい!
僕に出来る事なら、
力にもなりたいんだ。
PS:夕食を済ませていないと思うので、何か買って行きます。


RE>
何も告げずに退職してしまい、申し訳ないと思っています。何度も話さなければと思ったんですけど、実直な部長に話したら不愉快な思いにさせてしまうでしょうし、部長との一時はとても愉しく、又総てを忘れさせてくれました…。今更お話をしても、悪戯に同情を買うだけですし、部長との出会いを大切にしたかった私の我が儘で、ついに言い出せずにいました。部長の事大好きです!
もっと早くに出逢って居たかった…。どうか私の様な女など忘れて、仕事に邁進して下さい 恵子

RE>RE>
君に出逢え、君を愛した僕の気持ちに嘘はない!君がそこまで言うのなら、真意を聞かせて欲しい。その方が君自身納得行くだろう?僕は男として君を愛した、勝手に自分の気持ちに決別し、人の気持ちはどうでも良いのかい?いいかい?良く聞いてくれ、君の人生の邪魔をするつもりは無いけど、僕にとっても掛け替えの無い人生だって事、理解出来ない君じゃないだろう?


RE>RE>RE>
判りました、
総てお話します!ですが部長とお会いするのは今夜を最後にさせて下さい

RE>RE>RE>RE>
判ったよ!
今会社を出た処だから、19時には君の家に着くと思う、それまで待っていてほしい!


RE>RE>RE>RE>RE>
判りました
気をつけてお越し下さい 恵子

大樹はタクシーを呼び止め、彼女の自宅の最寄り駅である、西武新宿線野方駅まで急がせていた。

[惜別]

野方駅前でタクシーから降りた大樹は、道すがら惣菜弁当のチェーン店を見つけると、牛かつ弁当を二食分買い求め、重い足取りを引き摺る様に、恵子の自宅へと急いだ。

10分程歩き、漸く恵子の自宅の呼び鈴を鳴らすと、ゆっくりと玄関の扉が開けられ、憔悴しきった面もちの恵子が、玄関先で立ち尽くしていた。

「待たせたね…」

「うぅん!大丈夫だから」

狭いキッチンのテーブルに腰掛け、持参した牛かつ弁当を差し出すと、背中を向け、お茶を注ぐ恵子に黙って視線を送っていた…。


「結婚するんだって?」


「ええ、お見合い何ですけど叔母の薦めで…。」


「随分急だったから、信じられないでいるよ…。」


「ゴメンナサイ!何も話せずじまいで…」


「お腹空いてるだろう?」

「冷めない内に食べよう!話はその後でもねっ?」


寡黙なまま、向き合わせたテーブルで食べ終えると、熱いお茶を煎れ直しながら、ゆっくりと恵子が口を開き始めた。


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