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ウレシナミダ
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ウレシナミダ-3

男達に連れられ、馬車で向かった先は教会だった。
ブーケを持たされ、開かれた扉の中には多くの人。
祭壇にいるのは神父と知らない二十五頃の男。
あの男が第一王子アディ殿下だろう。
悔しくて涙が出そうだったが、ぐっとこらえた。
『いいかい、アリィ。涙はそう簡単に流すもんじゃぁない。自分の心が本当に揺さぶられた時、流すものなんだよ。例えば、嬉しい時とかね。だから悲しいからといっていつまでもメソメソするんじゃなくて、前を見据えるんだよ』
今は亡き、育ての親の言葉だ。
私はこんな所で涙を流したくなかった。
私はゆっくりと祭壇に近付いていった。
私が殿下の横に立つと、神父が言葉を発し始めた。
ほとんど聞いていなかった。
「…誓いますか?」
神父に問われ、私は黙った。
教会内がざわつく。
答えない私に神父は再度、「誓いますか?」と尋ねてきた。
「……ッ!」
ここまでか。
やっぱりあの男は迎えにこなかったか…。
私が諦め、口を開こうとした瞬間。
バンッ!
「アリィ!!」
扉が勢いよく開かれ、私を呼ぶ声がした。
辺りは一瞬静まり返った。
私は振り返った。
そこには息を切らし、立っている男の姿があった。
「アリィ。約束通り迎えにきた」
その言葉を聞いた瞬間、私は走り出した。
そして私は男に勢いよく抱きついた。
「…遅くなってすまない」
彼も私を強く抱き締めた。
私の目からはボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「…っどういうことだこれは!?」
静寂を打ち破ったのは、アディ殿下だった。
「どうもこうもないでしょう。いつも貴方が人が欲しがった物を横取りするのを黙って我慢してきましたが、彼女だけは譲れません」
男が冷たく言い放った。
私はいまいち状況が飲み込めない。
「なっ!今はお前が横取りしたではないか!」
「その頭に血が登ると冷静に物事を考えられない癖も直した方がいいですよ。…兄上」
兄上?
「ここにいる者はよく聞いておけ。この娘はディアン国第二王子の私、ラディ=ウィ=ディアンの花嫁だ!」
男…ラディが言った。
一瞬の間の後、教会には割れんばかりの拍手が響いた。


数日後。
「ラディ=ウィ=ディアン。汝は妻を一生涯愛し、守り抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「アリィ=コルト。汝は夫を一生涯愛し、支え続けることを誓いますか?」
「誓います」
「それでは指輪の交換を」
神父の言葉に従い、お互いの薬指に指輪をはめる。
「それでは誓いのキスを」
(あのさ、頬にしてくれないか?私、初めてだから…)
(分かった)
ヒソヒソと交わされた会話。
私はそっと目を綴じた。
ぐいっと腕を引っ張られ、ラディの方へ引き寄せられる。
同時に私の唇に ラディの唇が重なった。


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