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熱帯魚の躾方
【SM 官能小説】

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テレビ取材-1

 今朝は朝からけたたましく鳴く蝉の声が騒がしい。敷地を出て箒を片手に空を仰ぐと真っ青だ。暫くは晴天になるだろう。「おはようございます!」通勤する近所の人は毎日同じ顔ぶれだ。駅へと足を運ぶ人達の額にはもう汗が浮かんでいる。季節的に夏は好きだが、年々暑くなっているような気がする。魚の温度管理に気をつけないと、急激に水温が上がって酸欠になる可能性がある。暑い夏は特に気を遣う。
 朝9時、開店作業を終える頃には、汗びっしよりだ。シャワーを浴びて、店のロゴマークが大きく入ったネイビーブルーのTシャツに着替えて、オレンジ色のエプロンを着けて店に立つ。比較的に暇な午前中に魚達の体調をチェックしていく。毎日のように見ていると、何となく個体の識別が出来るようになる。メダカ類のように群生して、極小さいものは無理だが。親指ほどの大きさがあれば何となくわかる。中には水槽に近づくと餌が欲しいのか、興味があるのか?そばに寄ってくる魚もいる。威嚇したり背を向けて逃げる魚も勿論いる。ルーティンな作業だが、毎日相手していると楽しいものだ。

「リリリリ♪」店の電話が鳴った。「はい、アクアリウム菰田です!」若い男性の声が響く「あの今、入口に居るんですけど…。街角おはようチャンネルっていうネットテレビの番組取材なんですが、大丈夫でしょうか?」「はい?」「あの生放送なんですけど…。」少し躊躇したが、無料で宣伝になるかもしれないので、受けることにした。「まあ、いいですけど。」「あー、ありがとうございます!」敷地の門扉のところから電話しているようだ。
 硝子戸が開いて、「おっはよーございまーす!宜しくお願いしまーす!街角おはようチャンネル。今日のレポーターの中山沙莉でーす!」黒いノースリーブのタイトなワンピースに身を包んだ。美しい女性が団栗のような大きな瞳をキラキラさせて、私を見つめている。ビックリして、上手く状況が飲み込めない。何故、うちの店に彼女が来ているのだ?信じられない光景に目を疑った。何ということだろう。毎朝のようにスマホの画面に映してきたあの美しい熱帯魚が目の前にいるのだ。
 「おはようございます!突然すいません!オーナーの方ですか?」迎えに出てきた私に彼女からマイクが向けられた。「あ、はい!オーナーの菰田です。」「熱帯魚に囲まれてきれいですね!何匹位飼われているんですか?」「正確に数えたことはないけど、二千位は居ますね。」カメラに並んで映るように左側に斜めに彼女が立っている。目線とマイクを向けられる度に胸元までの長い髪から甘い香りが舞う。スマホの画面を通して見るより数倍は美しい。カメラに気をつけていないと、大きく豊かな乳房と桃のような尻に目が行ってしまう。取材時間は十分ほどだっただろうか、自慢のメダカ「サクラバイオレット」を最後に紹介して収録は終わった。「ご協力ありがとうございました?」深々と頭を下げた。「こちらこそ、ありがとうございました!」私から目線を外し、彼女がディレクターに何か合図している。「あの、おトイレは?」「あ、あちらですよ!どうぞ!」「沙莉ちゃん、次すぐ行くから、急いでね!」「はーい!」小走りにレジの隣にあるトイレへと走って行った。「あっ、すいません!名刺かショップカードは?頂いても?」名刺を手渡すと礼を行って小走りに去っていった。

 まだ、彼女の体温が残っているであろう便座に触れてみたくて、急いでトイレのドアを開けた。便座に触れてから座った。ここにあの桃のような尻が置かれたと思うと、長らく忘れてた何かが心を揺らす。
 予備のペーパーや消臭スプレーを置いている左側の白い棚にスマホがある。カバーの後ろの柄が寿司ネタになっていて、ガチャペンのストラップが付けてある。数日前に彼女がSNSで自慢していたスマホだ。慌てて事務室のパソコンとUSBケーブルで繋いだ。データ共有するには4ケタの暗証番号が必要だ。パソコンからネットを繋ぎWikipeciaで彼女の情報をめくる。まずは誕生日の1010を入力する。何と一発でロック解除出来た。入口の鍵を締めて、慌ててスマホ内のデータを転送する。写真、動画、アドレス、各種SNSのIDとpass、以前はIT系の会社に勤めていたから、非常に簡単な作業だ。転送終了後に電話がなった。「はい、もしもし!アクアリウム菰田ですが…。」「あー、良かったー!すいません、スマホ忘れちゃって!すぐ取りに伺います!」数分後、硝子戸が開いて足早に彼女が入ってきた。「はい、これ!」と白い手に手渡す。「あ、ありがとうございます。」深々と頭を下げてから、「ちょっと観ていっていいですか?」「どうぞ、ゆっくり。他の方たちは?」「次の収録があるので、もう行っちゃいました。」はにかむような優しい笑みで答えた。
「うっわー、可愛いい!」「こっちに寄ってきたー!」幼い子供のようにはしゃぎながら観ている。「この魚きれーい!皆、色が違うし、鰭がひらひらと長くてきれい!スマホで撮っても?」「あー、いいですよ!魚がビックリするんで、ライトとストロボは着けないで。」「何でこの子達は一尾ずつ何ですか?淋しくないのかな?」「えーっとね。こうすると。」小型水槽の間に置いた観葉植物の鉢をどかせて、水槽を近づける。ベタが向かいあって鰓を拡げて大きく口を開けて威嚇し合う。興奮して背鰭が大きく立ち、発色も強くなった。「えー?これってケンカしてるんですか?」「この魚はベタって言って、同属で出合うと相手を殺すまでケンカしちゃうんですよ!」「オス同士とか?」「交尾期以外は、関係なくやり合っちゃうみたいですね。」「こんなにきれいで可愛いのに?」「でも、水の中では弱い魚のほうで、普段はミジンコとか食べてみます。」水槽と鉢を元に戻した。「少し餌あげてみますか?」「えー、いいんですか?」「この子達は、まだちょっと興奮しているから、別の子から。」餌の入った小さなプラスチックの容器から蓋に顆粒状の白い餌を移す。「えーっと、こんな感じで。」


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