恋人からの嫉妬-4
*
「ーー本間さん、どーしてくれんの、これ…」
「ふふ、そんなに興奮してくれたの?」
佳織が満足したあと、そんな会話をしていると、引き戸が開く音がした。
ーー加奈子だった。
「あ、加奈子……起きてきた。また連絡します。すみません」
焦りながら、理央は電話を切る。
加奈子はトイレに起きたのだろうか、理央が電話中だったことを確認すると、何も話しかけずにトイレがある方へ向かう。
理央が興奮冷めやらぬまま座っていると、加奈子が戻ってきた。
そして、寝室に入らず、座っている理央の体を抱きしめた。
加奈子からこんなふうに、理央を抱きしめるのは珍しい。
「電話、誰だったの?」
今、抱きつかれると、危ない。
まだ呼吸が荒いままで、加奈子のことを襲ってしまいそうだった。
「本間さん、だよ」
「こんな遅くに?」
「うん……。ちょっと、僕から電話した。ごめん、起こした?」
「ーーううん。トイレ行こうと思ったら、電話してるなって……少し、聞こえちゃって……」
興奮して熱いはずの体に、ぶわっと鳥肌が立つ。
佳織の自慰の声を聞いていただけとはいえ、もし理央の言葉が少しでも聞き取れていたならば、何をしていたか想像がつくだろう。
「本間さんと……何の話……してたの。暖房もつけずに……こんなに、体熱いの……何で?」
「あ、いや………それは」
「いつも、電話してるの?」
「し、してないっ……今日はたまたま。これは本当」
理央の耳元で聞こえる加奈子の声が、心做しか震えている。
理央は後ろを振り向くことができなかった。
「教えて。お願い。何の話、してたの」
「は、話っていうか……本間さんが……声聞いて欲しいって」
「声って?」
ごくり、と理央は唾を飲み込む。
理央は一呼吸おいて、意を決して口を開いた。
「一人で、するからって……その、声を……」
その瞬間、理央を後ろから抱きしめる加奈子の手が、ぎゅぅう、と強まる。
ボディソープと、サラサラと垂れる髪の毛から香る、シャンプーの匂い。
佳織とのやりとりで、興奮は持続している。
理央はぎゅっと目を閉じた。
すると、加奈子に手を引っ張られ、リビングのローテーブルの方に座らされる。
加奈子は、理央の右隣に座る形になって、理央の体に抱きついた。
「ほ、ホントに……電話、私的にすることないよ?今日、たまたま……」
「うん。それは、わかった。でもーー普通にする内容じゃ、ないじゃない。隠さず、教えて。どんな風に、本間さん……したの」
加奈子は理央の胸に顔を埋めたまま、理央の顔を見ようとしない。
理央は口を開いた。
「僕に……後ろから……されてるところ、想像して……って言ってた。始め、自分の胸を触ってたみたいで…」
「うん……それから?」