少女の決意-4
少女の、熱い視線を感じる。彼女がそれを見るのは、かなり久しぶりのことだった。
「茉由、引いてない? 気持ち悪いとか……」
「ううん、ぜんぜん。前に初めて見た時は少し驚いちゃったけど」
茉由はこともなげに答える。
「触っても……いい?」
「うん、もちろん」
要求に答えると、茉由はそろそろと手を伸ばし、武司の分身の先端に触れた。生暖かい感触を、指先に感じた。
「……えへへ」
少女の口元がほころんだ。
「どうしたの?」
「ちょっとだけ、カワイイかも」
そんな感想に武司は呆れたが、あるいは、彼女には小動物のように見えるのかも知れないと思った。
「ええと、ここを舐めるんだよね?」
言いながら、茉由は陰茎をそっと手に取り、先端を真上に向けた。
「そう。やり方、分かる?」
「うん、ママがしたのを覚えてる」
彼女は屈み込んで顔を近づけると、鼻をヒクヒクさせながら匂いを嗅いだ。
未知の物を前にした時、まず匂いを確認するというのは、人間の持つ本能なのかも知れない。
「茉由、ごめん。俺、今日はまだ風呂に入ってないんだ。臭いだろ?」
申し訳なさそうに言うと、武司は上半身を起こしながら
「一旦やめよう。急いで身体を洗ってくるよ」
と続けた。だが、茉由は
「ううん、別に臭くないよ? このまま続きがしたい」
と答え、身体を押さえ付けるように、片手を彼の腹に添えた。
「ああ。そ、そう?」
武司は再び横たわる。
茉由はあらためて肉棒に顔を近づけ、その愛らしい口唇の隙間から舌を出す。恐る恐る男性器で最も敏感な部分に触れさせた。
「うっ――」
瞬間、武司は電気ショックを浴びたような感覚を覚える。
彼の反応を窺うと、茉由は本格的な口淫に移った。
舌を小刻みに上下させ、亀頭部分をまるでアイスキャンディーのようにペロペロと舐めた。根本に添えた彼女の手に、ヒクヒクとした反応が伝わる。
(パパ、気持ちいいんだ)
少女は慈しむように、赤黒い男根の先端にチロチロと舌を這わせた。
やがて亀頭の先端の尿道口、鈴口と呼ばれる部分から、ジワリと無色透明な粘液が滲み始める。俗に『先走り汁』『ガマン汁』と呼ばれるカウパー腺液である。
以前、夫婦のセックスを見た時、母親はこれも舐めていた。無害なことを知っていた茉由は、母と同様に舐め取った。口内に微かな苦味が広がるが、嫌な感じはしない。彼女は鈴口に口唇を密着させ、粘液を吸い上げた。陰茎がさらにビクビクと震える。
「パパ、おちんちん気持ちいい?」
「ああ。すごく気持ちいいよ。茉由は上手だな」
夫婦の営みを観察させた経験が、活きているのだろう。
「今度は全体を口に含んでみてくれる?」
彼はリクエストする。「うん」と返事を返し、茉由は小さな口を開き、
「――はむ」
と咥えた。
少女の熱を帯びた口内で、舌と粘膜が屹立をねっとりと包み込んだ。
女が男性器に対し行う口淫――フェラチオという行為について、茉由はすでに目の当たりにしている。この後どうすればいいのか、すでに分かりきっていた。彼女は顔を上下に動かし始める。
(娘が、こんないたいけな少女が、俺のを咥えている)
武司の陰茎全体に、快感が広がった。
フェラチオに夢中の茉由の髪に、彼はそっと触れる。彼女上目遣いでそれに応えた。
ほどなくして、少女の口元からクチュクチュと湿った音が鳴り出す。口内に唾液が溜まってきた。愛液でトロトロに濡れそぼった、膣内の感触に近づく。武司は射精感の高まりを感じた。
「……茉由、それくらいでいいよ。もう出ちゃいそうだ」
(出ちゃう? なにが?)
父親の分身への刺激を続けながら、茉由は彼の言葉に一瞬、そんな疑問を持ったが、
(……そうか、精子だ。赤ちゃんの素のことだ)
すぐに彼女は思い出した。
(パパも、いっちゃいそうなんだ。よし、それなら――)
武司の言葉を意に介することなく、茉由は彼への口淫を止めない。いや、むしろ更に激しさを増した。
(わたしがパパを気持ちよくしてあげる)
そんな、一心だった。
「だめだ、茉由! 出るっ、口を離して――」
言うや否や、武司が達した。精がほとばしった。
妻を亡くし、悲しみに塞ぎ込んで以来、自慰行為をしてこなかった彼の、溜まりに溜まった大量の精液が、少女の口内に注ぎ込まれた。
「――んん! んぷっ!」
予想外の出来事に、茉由は思わず悲鳴にも似た声を漏らした。
「はあ、はあ……茉由、平気?」
慌てて訊く。武司の心中では、久しぶりに射精した満足感と、少女の口を汚(けが)してしまった罪悪感がない交ぜになっていた。
「んん」
肯定の意味なのか、それとも否定の意味なのか、茉由はそのひと言だけ答えた。
彼女の口から分身を引き抜く武司。自身の放出した精液と、彼女の唾液でドロドロになっているそれは、未だ萎えることはなく、そそり立っていた。
「それ、早くこれに吐き出して……」
サイドテーブルのティッシュを数枚引き抜き、茉由に差し出す。彼女の口の端には、白いヨダレが一筋垂れていた。
しかし、少女はティッシュを受け取ることなく、指先で口元のヨダレを拭う。そしてピンクの舌を出してそれを舐め取った。
「ほら、出さないと……」
武司は手にしたティッシュを彼女の口元に運ぼうとするが、茉由は顔を左右に振ってそれを拒否する。
彼女がどうするつもりなのか、武司は懸念を抱く。すると、茉由は薄笑みを彼に向け、コクっと喉を鳴らして口内の液体を全て飲み込んだ。