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月蝕
【痴漢/痴女 官能小説】

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知らない場所-2-1

 部屋に入るとすぐに、その男性は着ているものを全部脱いだ。五十三歳には見えない筋肉質の背中、毛のない真っ白なお尻。股間のそれは子供のように小さかった。いえ、興奮していたわけでもないので、小さいかどうかなど本当は分からなかった。ただ、彼はその部分を剃毛していたので、それが子供のような印象を私に与え、そして、小さいと思わせたのかもしれない。でも、そんなことはどうでもよかった。今回の目的はそこではないのだから。
 洋服を着ていたときには、私の方が若い、という安心感があったのに、あまりにも綺麗な肉体を見て、私は自分の肉体に対するコンプレックスが刺激されてしまった。コートを脱いだだけで、そのまま私は立ちすくんでしまった。この男性の前に晒して良い裸なのだろうか、と、そんなことを考えてしまったのだ。
 男性は、白いお尻をこちらに向けたまま、ベッドに上がった。そして、ベッドに、白いシーツのような物を敷いた。それは彼が持参していた大きな黒い革製のバックに入っていた物だ。
「何ですか。それ」
「貴女の羞恥の痕跡を隠し去るための道具ですよ。二人でいる間には、いっさいの羞恥は要りません。でも、二人がここを去った後に羞恥だけが残されるのは、お嫌なのではないでしょうか。だから、これは私が持って帰り、こっそり捨てるんです。貴女の羞恥と一緒に」
 羞恥は捨ててくれるのだ、と、そう思ったら、私は気楽になれた。この場には羞恥は要らないのだ、と、そう思えたのだ。少し下腹が出てしまった。お肌の手入れを怠けてしまった。体毛だけは永久脱毛なので綺麗だが、お尻は少し垂れたかもしれない。でも、そんなことはどうでもいいのだ。羞恥は全てあの彼の持参したシーツの中に隠され、そっと彼が持ち去ってくれるのだから。
 私が服を脱ぎ始めると、彼はさり気なくベッドを整え直していた。整えるほど乱れているはずのないベッド。おそらく、彼は脱衣する私を羞恥から解放してくれているのだろうな、と、私はそう思った。細やかな気遣いが嬉しかった。
「それではシャワーを浴びて来ますね。それとも、先に浴びますか」
 私がそう言うと、彼は不思議そうな顔で私を見つめた。
「おかしなことを言う方ですね。貴女は素敵な女性です。美しいし、上品ですし、何よりも知性的だ。そんな貴女の匂いを私から奪うと言うのですか。貴女の美しさは貴女の匂いにまで宿っているというのに、それを私には与えてくれないと言うのでか」
 汗ばんでいることは自分が誰よりも、よく分かっていた。朝はシャワーを浴びた。でも、もう午後なのだ。しかも、今日は暑かった。トイレにも何回か行った。無理だ。私の身体は恥ずかしいほど汚れている。でも、どうしてなのだろうか、私はベッドへと導かれていた。強引にバスルームに逃げることだって出来たはずなのに、私は全裸の身体に汚い匂いを纏ったまま、ベッドの上に寝てしまった。
 その男性の言葉のままに、身体が勝手に動いてしまったのだ。いや、違う。もしかしたら、私は、想像以上に嫌な臭いだと気づいた彼が、その上品な笑いを引き下げ、苦痛に顔を歪めるところを見たかったのかもしれない。


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