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月蝕
【痴漢/痴女 官能小説】

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過敏2-1

 あんな大胆なポーズをしてもいいの。ジムの鏡には、二十代前半と思われる髪を金色に染めた女性が、トレーナーの前で膝を開き、ベルトを太ももに巻き付けられている。
 もちろんウェアを着てはいる。着てはいるけど、足やお尻のラインは丸見え。不思議なことにショーツのラインはどこにも見えない。まさか、レギンスの下は何もつけていないというのだろうか。まさかね。
 表に響かないようなショーツ。フィットネスのウエアを買った店からのDMにあった気がする。それよね、きっと。
 私は、まだ、ろくにストレッチもしていないというのに、額から汗がにじみ出るのを感じた。
 鏡の前、私は、一人でストレッチをはじめた。鏡には、トレーナーと金髪の女性が映っている。すると、トレーナーは金髪の女性の太ももの前と後ろを舐めるように見ながら、こう言ったのだ。
「このあたり、ですよね」
 トレーナーは、ベルトを巻かれた彼女を一度立たせた。太ももの横に手を添わせるようにしている。しかし、触れてはいない。
「うん、そうなの。気になるの、ここ」
 そう言って、金髪の女性は、上体を後ろにひねりながら、お尻の少し下の太もものを触った。肉が巻き、足首も像のよう。おそらくスポーツをした経験がないのだろう。
「メリハリつけたいんですよねえ。わかりました、だいじょぶですよ」
「ほんとにぃ」
 甘ったるい声で、彼女はそう答えた。
「任せてください。さあ、はじめましょう」
 彼女の甘えた空気をかき消すかのように、トレーナーはすっと立ち上がり、マシーンの調整に取り掛かった。 
「はーい」
 彼女は、めんどくさそうにそう返事をした。誰かに言われ、しぶしぶジムに来ているのだろうか。私の月会費は一万円。しかし、パーソナルトレーニングは、一回、一時間、八千円。それを彼女のために払ってまで、彼女を美しくしたいとそう思う人がいるということなのだろうか。
 マシーンに座った彼女の顔。グロスもつやつや、つけまつげもバサバサ、アイラインもくっきり。もしかしたら、あれは、アートメイク。朝、メイクが楽かな、とそう思い、調べたことがある。眉だけで十二万、という表を見て、それ以上調べることはやめてしまったのだった。
 美しさのためには、お金を惜しまないのだろうか。もしくは、やはり、彼女のために、お金を出す人がいるのだろうか。どう見ても、彼女は、嫌々やっているようにしか見えなかったからだ。
「では、二十回いこうか」
「はーい」
 トレーナーが金髪女に、両手で鉄球のような物を握らせた。
「そう、もう少し、ガニマタになって」
「え、もっと、このくらい」
「そうそう、そのまま、これを持ったまま、手をふりあげるように」
「おもーい、こう、こんな感じぃ」
 肉がたっぷりとついた扁平なお尻を後ろに突き出す。ストレッチの効く素材なのだろうが、今にもはちきれそうなレギンス。背中は、か細いストラップから、白い肉がはみ出している。
 私は、ゆったり目のTシャツとレギンス。最近、太ってはきたものの、彼女よりは、ずっとずっとスリム。それでも、彼女のようなぴったりしたレギンスや、まるで、ビキニのようなトップスをつける勇気などない。
 彼女は女としての自信に満ち溢れているように思えた。
「そう、そうそう、いいですねえ。じゃあ、二十回、それを持上げますよ」
「えー、二十回もー」
「そう。はい、がんばりましょう」
「はあい」
 甘えたような金髪の女性の声。ジムって、こんなとこだっただろうか。もっとストイックな人ばかりだったような気がしていた。そうした人たちがいたから、私なんて、まだまだ、とそう思えた。その敗北感はやる気につながった。
 しかし、彼女を見ていたら、敗北感というより、劣等感、いや、そもそも、お前は女失格、と宣告をされたような、そんな気持ちになった。
 


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