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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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初めてのスワッピング(1)-1

 ある平日の午前9時に、わたしは権堂の車に拾われた。

 権堂が言うには、先方のご夫婦はたっぷり時間をとりたいから、是非泊りに来てくれと言っていたとのこと。こちらとしては、泊りがけで家を空けるのは難しいから日帰りで、という希望をお伝えする中で、『では、できるだけ早めにおいでください』ということで、10時半頃を目処に訪ねることになった。

 先方のお家は、以前、権堂と食事をしたことがあるステーキ屋あたりからなら1時間ちょっとの所だと言う。夫が会社に出かけるのは午前7時半だから、家を8時過ぎに出れば、その界隈には小一時間で着ける。わたしはステーキ屋がある街の最寄り駅に9時前に着くようにする、と権堂に伝えた。

 駅前に立って辺りを見回していると、すぐに目の前に権堂の車が現れた。そそくさと助手席に乗り込む。

 「お待たせしてすみません…」

 シートベルトを締めながら権堂に声をかける。出がけにシャワーでも浴びてきたような石鹸の匂いがする。
 
 「いえいえ。こんな暑い日にお待ちいただいてはいけませんから、少し早めには来ていました」
 「いつもすみません」
 「とんでもない。なんとか都合をつけていただいてうれしいです。今日はよろしくお願いしますね」
 「よろしくお願いします」

 なにせ今日はわたしにとっては初めてのことである。

 「今日はいい天気ですね…。お洗濯とかなさって来られたんですか?」
 「いえ…」

 車が動き出すと権堂が当たり障りのないことを話しかけてくれるが、つい口が重くなってしまう。そんなこちらの雰囲気を察したのか、権堂が今日の予定を伝えてくる。あえて事務的に伝えているような素振りに心遣いが感じられる。

 「今日の予定ですが…このまま順調に進めば10時半より前には前原邸に着けるでしょう」
 「はい。承知しました」
 「ああ、すみません、今日お訪ねするのは、『前原さん』ご夫妻です。前にもお話していたと思いますが、ボクの人生の先輩、とでも言うかな。とにかく人格者でね。いい人なんですよ」
 「ええ…伺っています」
 「お昼はご馳走してくれるそうですよ」
 「はい…」
 「で、おいとまするのが16時半。先ほどの駅前までお送りいたします」

 わざわざ中途半端なところで降りずにわたしの家まで車で送ってくれてもいいのだけれど、あくまでも一定の距離感を保ち続けていくことが肝心というのがお互いの暗黙の了解でいるから、権堂も善意にかこつけた下世話な覗き見趣味のようなことはすることがない。

 「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
 「ですので、ランチも入れて6時間の滞在になります」

 自分でも緊張しているのがわかっていたから、緊張を解きほぐそうと敢えてジョークを入れてみた。

 「じゃぁ、『延長1回』ぐらいの感じですね…」

 そんな心情を理解したのか、権堂が大げさに笑ってくれる。

 「そうそう。そんな感じですね。あっという間に過ぎちゃうなぁ。まあ、今日は延長コールは要らないですけどね」
 「楽しい時間だからこそ、早く過ぎてしまう…」
 「そうなんですよ。まさに、そのとおり。何も構えることはありませんよ。普段どおりのボクたちでいればいいですし、まずは見ていてくだされば十分です」

 『まずは見ていてくだされば』と聞いて、今日は見ているだけではないのだな…と改めて思う。権堂とはもう何度もそういうことをしている訳で、普段と何が違うかと言えば…と今さらながら想像をめぐらす。

 普段と何が違うかと言えば…まずは相手が権堂であっても、前原夫妻という他者がその場に居るということ。そして、今日はほぼ間違いなくわたしは前原氏とセックスするということ。そしてその様子を権堂も見ているということ。前原氏の妻も見ているということ…。

 『前原夫妻』のことは、権堂から何度も聞いているから、好人物であり人格者としてのイメージができている。でも、それだからこそ、スワッピングというインモラルな行為を好んでいるということとのギャップを埋めきれないでもいる。

 そんなことを思い浮かべながら、車窓を眺めている。車は広い道路を順調に走っている。久しぶりに赤信号に引っかかって車が止まる。

 「あ…!」

 わたしは思わず声をあげてしまった。

 「どうかしましたか?」

 権堂が驚いてこちらを向く。

 「…あ、すみません…。なんでも、ないです」
 「いやいや、何か気になることでもあったらおっしゃってください」
 「いえ、その…前原さんのお家にお邪魔するのに、手ぶらで来てしまって…と思って」

 権堂が今度は声をあげて笑っている。気遣って笑っているようではない。

 「ああ!ご心配なく! そんな心配、あなたがなさる必要はありませんよ」

 確かに権堂は前原夫妻とは長い付き合いなのだから、わたしごときが今さら気を回すようなことではなかったと思う。でも、ふと反射的に自分は土産を何も用意していないことに気付き、そしてそのことに気付いて焦りを覚え、声まで上げてしまった。

 「うれしいですよ。まるで本当のボクの妻みたいに気を遣ってくれていて」
 「いえ…ただそそっかしいだけで…」
 「まあ、こういう言い方がいいかどうかはわりますが、強いて言えば今日のお土産は何といっても『貴女』…ですよ。うーむ…いいぞ…自分の妻が…世話女房がよその男に…という感じが高まってきた」

 そう言いながら権堂が車のスピードを上げる。


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