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月の裏側
【調教 官能小説】

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回想-1

20年以上も前のことだ。

美月は就職をしたばかりだった。
一人暮らしをしていた。
ちょうど彼氏もいない時期で、友人から誘われた合コンに行くことになった。

渋谷のイタリアンで5対5の合コンだった。
まあ、付き合うのも悪くないかなという感じの男性からアプローチをされ、
連絡先を交換することになった。

合コンの翌日には、もう次に会う日が決まっていた。
その後、2.3度食事や映画に行き、何となくこのまま付き合ってもよいかなと思っていた。
ものすごいときめきはないものの、とてもスマートで、10歳くらい年上な
こともあり、安心してエスコートしてもらえる相手だった。
柳さんという名前だった。

次の約束をする際に柳さんは言った。「泊まれると嬉しいな。」と。
抵抗する理由はなかった。
夏の夜、目黒で待ち合わせをした。
美月は、紺のワンピースを着ていた。袖にパールのような飾りがついた
清楚な感じの服装だった。

食事をした後、自然とエスコートをされホテルに向かった。
少しワインを飲んだせいもあり、初めての泊まりで緊張していた。
柳さんは、「スペースが欲しいからラブホテルに行くね」と言って、
タクシーを拾った。
スペース?まだ20歳すぎの美月は、なんのことかわからなかった。

ホテルの部屋に入り、てっきりキスをしたり押し倒されるかと思っていた
美月に驚くべきことが起こった。
ベッドに腰掛けるよう言われ、柳さんが静かに話し始めた。
「僕は、Sなんだ。」と。
美月は、ハッとした。ちょっとしたレディースコミックなどでは読んだことが
あったが、深い知識はなかった。ただ、自分自身がMなんだろうと気づいてはいた。
「私も、多分ですが、Mだと思うんです。」と下を向きながら、声を絞り出した。
柳さんは、「気づいていたよ。」と美月をまっすぐ見て言った。

そして柳さんは続けた。
この嗜好が合わないと、どうしても継続できないと。
嗜好が合わない相手に無理に強制することはできない。
「いいね?」と言われ、美月も静かにうなずいた。




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