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ロスト・マイ
【ファンタジー 官能小説】

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ロスト・マイ-1

あたしはそもそも学校というものがあまり好きではありませんでした。
本なんか読みません。雑誌なら読めます。
計算も損をしないくらいには、できます。
歴史とはあたしが作るもので、過去の人のことなんかどうでもいいのです。
理科は意味が分かりません。宇宙人にはちょっと興味がありますが。そのことは一言も教えてくれません。
音楽、これだけが学校というものの存在理由でした。
そこではじめてギターに触れ、胸がときめきました。
ここでいうギターはアコースティックではありません。
それなら前にさわったことがあります。
音は優しすぎてあたし好みではないし、何よりゴロゴロと太い弦を押さえるのが痛くて力が入りませんでした。
中等学校へ入って初めて見たのはエレキギターというやつです。
ネックは幅が狭くて握りやすいし、細い弦はあたしにでも押さえられました。
弾いてみると小さくシャラシャラと残念な音を出します。
音楽の先生がアンプにつないでくれました。
とたんにギターが叫びます。
ボリュームを上げると指で触っただけで、ギターはヒステリックな悲鳴を上げました。
それに恋をしました。

「よぅ、ギターなんかどうするんだ。盗んで売っぱらうのか」
タイトは同級生の友達でした。ちょっとワルなところもありましたが。面白いやつです。
うるさい母親にも、いい加減うんざりしていました。
だからあんまりいいヤツではないのは分かっていましたが、わざとタイトとつるんで、ひどい冗談を繰り返していました。
「あたしギターする」宣言します。
「おまえ、スターになれるとでも思ってるのか」バカ笑いをします。
「うん。あんたはこの先どうするの」
「俺はさ、高等部に行く気もないし。どうでもいいんだ」
「行く気ないって、そもそも入れてくれないじゃん」
「なんだよ、お前だっておんなじだろ」互いに笑います。
タイトはめったに他人を傷付けはしませんが、あたしはまるで保護者みたいに、行き過ぎないように見張ってやりました。
バカは楽しいけど。だれかを傷付けるのは嫌でした。
タイトは恋人ではありません。だからキスをしたこともありません。
「させろよ」言いますが、「何それ、あたし達が?」笑ってしまいます。
学校へは休憩をしに行きました。そのあと夜までふらふらしています。
いちど変な物を飲まされたことがありました。
「これ、気分が良くなるんだぜ」笑いながら飲ませようとします。
いつものイタズラ目でした。それはわかっていたのですが、その日は母親とケンカをしていました。
気分がよくなるのなら、と、飲んでやりました。
きっと世に言う『いけない薬』だったのだと思います。
でもそのあとが大変でした。
たしかに楽しくなって、タイトを抱いてやってもいいような気になります。
タイトは、抱きついてくるとキスをしようとしました。
あたしは笑いながらその顔に吐きました。
「げっ」タイトが逃げます。
あたしはそれが面白くて、追いかけて暴れます。そしてまた、吐いてしまいました。


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