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勇者の剣
【ファンタジー 官能小説】

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勇者の剣-1

その少年は普通のゲーム好きな高校生でした。
今日は誕生日、といっても、親が祝ってくれるわけでもなく、学校でも彼のことを知ろうとする者は誰もいませんでした。ほかのみんなでする、遊びや買い物、デートやいろんなイベントの話をしています。
いじめられているって? それもありません。 『へんなやつ』以上の存在がありませんでした。
いつもとおなじ、ひとりで学校から帰ります。
辛くはありません、イベントならゲームにもあります。どうせこの世はそんなものです。
でも、今日は、未来が部屋で待っていました。自分で用意したバースデイ・プレゼントです。
それに向かって、長い坂道を自転車で走り降りていきました。
その時です。彼の目の前に真っ黒な穴が現れました。
地面にではありません空間に、です。
彼はその中に落ち込んで行きました。
摩擦熱なのでしょうか、何なのか知りません、体が炎に包まれています。体から服が燃え落ちて行きました。
そして穴もろとも、彼はこの世界から消えました。
一部の魔術師には、その穴が、ある複雑な魔方陣の中心部分であると見えたでしょう。
また、ある呪術師は、その穴が、複雑な呪文の編み込まれた空間であると主張したでしょう。
なぜこんなことが起こるのかといった根拠は科学者や宗教学者に任せます。
今は素人にも分かる説明をしておきます。つまり、そうだからそうなんだということです。
落ち続けています。
真っ暗の中に二つの道が見えてきました。
ひとつには『勇者』と書いてあります。もうひとつには『癒し人(処女のヒーラー)』と書いてあります。
どちらかを選べというのでしょう、どうして魔王が無いのか不満に思いますが、まあゲームなんてこんなものです。
でもやりようによっては、勇者も魔王のようにふるまうことができるのです。

―――彼の意識が戻ったとき、倒れていたのは森の中でした。まだ夕方前で、穴に吸い込まれてからそんなに時間は経っていないようです。
ただ、彼にはいくつか気が付いたことがありました。
一番大事なのは、異世界にいるということです。森の草木には、見たことのないようなものがたくさんありました。
そして次に手元に小ぶりの剣が落ちていたことです。
彼にはそれだけで無条件に分かりました。ここは異世界、エルフや妖精が飛び交う森の中で、自分は勇者なのです。
ただ困ったことは裸でした。つまりライフはほとんどなく攻撃力もない、 見習だろうということです。
それに、ゲームオーバーになった時、元の世界に帰れるかどうかも分かりません。
森の周りには重苦しい空気が立ちこめていました。
そっと木の陰にかくれました。
普通なら、最初はそんなに強い敵は現れないのが定石でしたが、この世ではどうかが分かりません。
かわいい声が聞こえてきます。
森の中からうさぎがぴょんぴょん、スキップしてやってきます。
いえ、やっぱりそうです。それはうさぎの耳をした小柄な娘でした。ピンクの服を着て、大きな胸を揺らしてやってきます。
腕に抱えたかごには、いっぱいの木苺が入っています。金色の髪をしたかわいい娘でした。
そんな娘が急に悲鳴を上げます。
彼はさっと身を隠しました。のぞいて見ていると、大きな化けキノコが、うさ耳娘を押し倒しています。
化けキノコは傘の下の大きな口をあけて笑うと、うさ耳娘の足の間に入り込みます。
グイッと力むと、腰から大きな松茸を生やしました。
「ゆるしてぴょん」うさ耳娘が両手で股を隠します。
化けキノコは松茸の傘をパタパタと開け閉めしました。
そんないいことを、化け物にさせるわけにはいきません。大体、やつは雑魚キャラのはずです。
裸の男の子は化けキノコの前に飛び出しました。男の見せどころです。
化けキノコはまっすぐ見返すと、「なんだ、ちび助、何しに来た」松茸の傘をパタパタさせます。
彼の身長は化けキノコの倍近くあります。なにが小さいのか、よくわかりません。
まあバケモノのいうことです。
「離れろ」彼は剣を振りかざしました。
「お前、この状況が見えてるのか、少しぐらい待てよ」うんざりした目で彼を見ます。
「まてない。二番目じゃ嫌だ」
化けキノコはため息をつくと「そんな小さな剣で女を喜ばせられると思っているのか。死ぬがいい」
大きな口を開けて襲いかかってきます。彼は簡単に吹き飛ばされてしまいました。
「小さい上に弱っちいやつだ。すぐに終わってしまいやがる」化けキノコがあざけります。
彼は立ち上がるともう一度剣を構えます。「お前だけにいいことをさせて、たまるか」そして気合いをこめて頭上から一気に切りかかりました。
「勇者様、ダメぴょぉぉぉん」うさ耳娘が飛び出してきて、化けキノコの頭を叩きます。
パフッ。 傘の下から煙が出ました。
「これは毒ぴょん。松茸を切るしかないの‥」うさ耳娘が倒れます。


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