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女らしく
【コメディ 恋愛小説】

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女らしく【15】『夜と舞台と陰の祭』-5

「弱えな…模造刀じゃ威嚇にもならねえ」

間合いを切った稲荷が言った。
大和は足を少し開き、刀を右肩に担ぐ様に構えた。

八相という懸り(攻め)の構だ。

「模造刀でも肉は斬れる」

大和が攻めに入った。

稲荷も姿勢を低くし、四肢に力を加え、いつでも動ける様に構えた。

空気が圧縮されていくみたいだ。

重苦しい。

そして極限まで、限界まで堪えられた闘気が爆発した。

二人同時に地を蹴った。
大和は八相の構のまま稲荷に斬り掛かる。

刀が弧を描き、稲荷目掛けて振り降ろされた。

速さ、威力共に文句無しの一撃。

だが稲荷はそれを跳躍で躱した。

速さでは勝った稲荷が飛びながら、青い火炎を吐こうとする。

次の瞬間、大和は鬼の膂力を用いて刀の切っ先を急に反転させ、無防備な稲荷の腹を打った。

「燕返し…」

あの有名な剣術家が好んだと言われる秘剣…

稲荷も流石にこれには対応出来ず、舞台の縁ギリギリに仰向けに落ちた。

すかさず大和が止めを刺そうと駆け、刀を振った。

大和の勝ち…

誰もがそう思っただろう…

しかし…稲荷の身体がまたしても炎に包まれた。

そして、その変化した姿に振り降ろされた大和の刀がピタリと止まった。

「だから、テメェは甘えんだよっ!」

舞台の上で《オレ》がニヤリと笑った。

同時に途中で止められた大和の手をオレに化けた稲荷が掴み、巴投げの要領で放り投げた。

リングアウト…

この瞬間、大和の負けが決まった。

予期せぬ大逆転劇に会場が揺れに揺れた。

「惜しかったですわね」

どよめきの中、奏が励ます様に言った。

確かに大和が負けたのは残念だ。

でもオレは少しうれしかったりする…

大和はオレに刃を向けなかった…
稲荷が化けたオレだとしても大和はオレを斬ろうとはしなかったから…


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