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女らしく
【コメディ 恋愛小説】

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女らしく【15】『夜と舞台と陰の祭』-6

「じゃあまた♪稲荷君によろしくね♪」

表彰式も済み、夢は上機嫌のまま帰っていった。

オレは夢を見送った後、控え室へ行った。

「二人共お疲れさん!かっこよかったぞ!」

稲荷は兎も角、大和は落ち込んでいる様だった。

「元気出せ!大和」
「ごめんな…負けて…ちょっと顔洗ってくる…」

大和はそそくさと部屋を出ていってしまった…

「お疲れ稲荷、でも最後のアレは卑怯だろ?」
「別に俺は卑怯だとは思わない…」

ったく…稲荷はどうしてこうなんだろうな…

「勝たなければ…生き残らなければ、守れるもんも守れねえ。その為には卑怯だの何だの言ってられねえ。何がなんでも勝つ…その気持ちがあの野郎には足りねえ」

確かに稲荷の考えも分からなくは無い…

「相手も気遣う…それが大和のいい所だと思うんだけどな♪」

稲荷は相変わらず不機嫌そうにしている。

「マコト…言いたいことがある…」

今まで立ったまま入口の壁にもたれていた稲荷がスッとこっちに近付いて来た。

「何だよ?」

窓から差し込む月明りに照らされながら稲荷は言った。

「左手を出してくれ」

言われた通り左手を出した瞬間、

「うわっ!?」

その手首を稲荷の右手が掴み、グイッと引き寄せられた。

そのまま、何の抵抗も出来ず、稲荷の胸板に顔がぶつかり、強く抱き締められた。

「お、おい…何の真似だよ…」
「マコト…お前が好きだ。俺がお前を守る…」

稲荷は静かに、けれど力強く囁いた。

「…ええぇぇええ!?」

訳が分かんなかった…

「ふ、ふざけるのもいい加減に…」
「ふざけてなんかいねえ…俺はマコトを愛してる…マコトを守るのは俺だ。
…なあ、聞こえてんだろ九条」

稲荷の肩越しに見た入口には大和が立っていた…

暗いため大和の顔色を窺い知ることは出来なかった。

「大和…」

オレの頭の中で昼間のタロットカードの絵柄がグルグルと回り始めた…


続く…


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