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LOOSE
【その他 官能小説】

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LOOSEV〜FINAL〜-3

けれど…―
「…ナナ」
名前を呼ばれて悠に抱きしめられた瞬間、菜々子の中で安定していたものがぐらつきを見せた。
『ゅっ…』
言葉を発しようとした口を唇で塞がれる。
悠の熱い舌が滑り込んで絡み合う。
煙草の味がして少し苦い。
『…たばこっ』
「だいじょーぶ」
抱きしめたまま灰皿に煙草を押し潰し、菜々子はベットに押し倒された。
すぐ近くに悠を感じて胸が高鳴ると同時に切なさが込み上げてくる。

…ダメ。
そんな風にしたら溢れてしまう。
押さえ込んで、抱え込んできたものが溢れてしまう。


抱きしめられ、服を優しくぬがされ、キスを全身に浴びる。
『…悠っ』
どうしてあなたはそんなに私を優しく抱くの?
悠の手のひらが胸を包んで優しく揉みしだき、時折口づける。菜々子の口からは自然に甘い声が出る。
『あっん…悠っ』
「きもちい?」
『ぅっ…ん…!悠…ゆぅ…っ』
何度も悠の名前を呼ぶ。
溢れてくるこの感情をぶつけるように。
涙が出てくるのを堪えるために。
悠…好きだよ…―

自分でもわかる位に濡れているのがわかる頃、悠がゆっくりと菜々子の中に入ってきた。
『…やっ…!』
「…んっ!はぁ……っ」
悠の息遣いと菜々子の息遣いがシンクロして部屋に広がっていく。
『…ゅう……っ』
目を開けると悠の首筋の赤い印が目に入って、キリキリと胸が痛んだ。
「…っ…ナナ…」
『…悠…っ』
切なさと愛しさが入り混じり、二人が果てる頃に菜々子は限界を感じていた。

この気持ちのまま悠の側にいるには辛すぎる。
悠の首筋の赤い印を見るたび、悠が私に触れる度に私は自分の中に息づく思いの大きさを思い知るから。
そしてそれはどうしようもないものだと痛いほど思い知るから。
私には酷過ぎるよ…



『…もうやめよ?』
悠がいつものように煙草に火をつける頃、考えより先に口が開いた。
『…悠といると辛いんだ』
悠の目を見ていれなくて絡み合った視線を外して、溢れそうになる気持ちと涙をぐっと堪えて悠に背を向けた。
…悠は私が部屋を後にするまで何も言わなかった。
もしかしたら他にも女がたくさんいるから私一人がいなくなろうが関係ないのかもしれない。
だからこれでよかったんだと思う。
そう自分に言い聞かせてしばらく街の中を何をするわけでもなくブラブラと歩いた。
携帯を時折気にしながら悠からの連絡がないことを確認している自分に、一体何を期待しているんだろうと嘲笑った。

『ばーか…』

何をしていたわけでもないのに日はいつの間にか暮れていて自分のマンションに着いた頃にはだいぶ遅い時間になっていた。
何をする気にもなれなくてベットにカバンと上着を放り投げ、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを一気に飲んだ。
ふと視界の隅に壁にかけられたカレンダーの日付の印がちらついた。
『……ぁ。』

“ななHAPPYBIRTHDAY”

翌日が誕生日である事をすっかり忘れていた。
しかも悠と過ごす約束をしていたから何も予定をいれていない。
思わぬ仕打ちに苦笑いが漏れた。

あと数時間で誕生日か…。
頭の中は悠の事ばかりがかすめたけれど、それも今日までだと心に誓った。

22歳の誕生日を迎えたら私は悠とはもう関係のない生活を始める。
悠の事は忘れるんだ…―。




「………ナ…ナナ」
私を呼ぶ声が近くでする。
いつの間に眠りに着いたんだろう?
誰?
この声は悠?
夢?
悠がいるわけ…―

「ナナ!!」

大きな声で名前を呼ばれ菜々子はまどろみの中から現実へと引き戻された。
何もかけず寝ていたせいか、少し体が冷えて寒さを感じた。
「…風邪ひくぞ。てゆうかお前も人の事言えねぇんだよ。」
声のする方を見るとそこにはいるはずのない悠がいた。
愛しい私の大好きな悠がそこにいる。

…―これはユメ?

『なん…』
「鍵。あけっぱなしだった。女の一人暮らしなんだから気ィつけろよ。」
『あ…うん…』
まだ頭の中にもやがかかった状態で菜々子は状況を把握できないでいた。
そんな菜々子には構うことなく悠は座り込み煙草に火をつける。
紫煙が一筋立ち上り、しばらくの沈黙が二人を包んだ。


「今日誕生日だろ?だから呼んだのに…先に帰んなよ…」
沈黙を破り、煙りを吐き出しながら悠は菜々子に視線を向ける。そんな真っ直ぐな悠の視線に菜々子は何も答えられないでいた。
ふとテーブルに視線を移すと、ワインとケーキと菜々子の好きなガーベラが並んでいた。
菜々子がガーベラを好きだと前に言った事を悠が覚えていた事に胸が熱くなった。
『…覚えてたんだ…こんなのわざわざしなくてもよかったのに…』
熱くなる胸の内とは裏腹な言葉が菜々子の口をつく。
そんな菜々子の言葉に悠は薄く笑った。
「ほんとそれ。自分でもわかんないんだよな。こんな事すんの初めてだし。……でもやっぱナナは特別だから。」
『…え?』
…トクベツ?
あまりにもさらっと悠が言ったせいで、菜々子は自分の耳を疑った。

「…これ。」
そう言って悠はぶっきらぼうに一つの包みを差し出した。
『何?』
「いいから開けて。」
煙草を揉み消しながら答える悠の傍らで菜々子はその包みを開いた。


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