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魔女の住む館
【ファンタジー 官能小説】

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魔女の住む館-1

5月5日

その屋敷は小高い丘の上にあった。
丘は一面の芝生で、群青と白のエプロンドレスのメイドが犬を追いかけている。
いや、小さいのは子どもだ。ふたりのメイドと芝生で追いかけっこをしていた。子犬のようにひとりの足元を駆け抜ける。
「あらあらヒナちゃん」メイドたちが笑って追いかけている。
そこへ向かって丘を上がっていく。空にかかって見える屋敷が依頼主の家。
二人目のメイドが転がって、「つかまえた」といってほおずりしていた。それがうれしくて、子どもはまた逃げだす。
そしてメイドの足が当たり、子どもは坂を転げて私の近くに落ちてきた。
女の子だ。私の足元に飛びついて来る。
「あ、すいません」メイドたちが凍りついた。
「うちに用?」子どもは相手がどんなであっても気にしない。
「そうだよ」
「案内したげる」その子は手を引っ張っていこうとする。
「怪我してるよ」
女の子は痛いと泣きもせず、土をはらって、ひざに唾をつけている。
私には、メイドがこの子に足をかけたように見えた。
屋敷につくと、戸を開けた女に「当家の主人に依頼されてきたマナキです」
迎えに出たのはスリップ一枚の赤毛の女だった。女の子を見て、「ヒナ、奥へ行ってなさい」
それから、「ルキナです。当家の主人は今、病に臥せっております」
主人の子を持つ情婦のようだ。胸の下でキュッとくびれたスリップの胸元にはレースが入ってはいるが、黒い乳首が透けて見え、下には陰毛が陰っていた。
≪奥方がいないのをいいことに、のさばっているのか?≫
わたしの目はごまかせない。こいつは魔女だ。問題なのはここで何をしているのかということ、この家に取りついているのかもしれなかった。
「主人は生きているのでしょう。会わせてもらおう」
寝室に案内された。尻をふって歩く後ろ姿は、抱きついて犯してしまいたくなる。
一歩ごとの尻のねじれが、そこへイチモツを突き入れてくれとせがむように見えてくる。
≪色香で惑わそうとしてるのか≫
女は主人の部屋には入ろうとしなかった。
ひとり中へ入り、自己紹介をした。
ベッドの男は泥のような肌の色をしている。
「私は死ぬのか」主人は上半身を起こそうとして、あきらめた。
「今来たばかりです。だが、気力をなくしたものは生きられない。気を抜いてはいけません」もうだめなのはひと目でわかった。
「これをやったものを探してくれ。呪いなら祓えるのか」
「まだ奥方が亡くなったことしか聞いておりせん」
「妻を殺した者と、殺させた者を始末するように言った。お前にもその探索をしてもらって、その始末の確認をしてもらいたい」
「それはまた穏やかではありませんね」
「お前なら魔の召喚というものを知っているだろう。詳しくはルキナに聞くといい」
「ルキナ?」
「私の飼う魔女だ。ここへ来ようとせん。おまえが連れてきてくれんか」
魔女を飼うことなどできない、と言いかけてやめた。どんな事情があるのかわからない。
だが、魔女なら境遇に流されたりしない。境遇を作るのが魔女なのだ。


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