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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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デパ地下-1

 事を終えてホテルを出る。そういうホテルが連なっている車一台が通れるほどの路地。通りに出れば相手の男とはすぐに分かれて。今日の相手は右へ、わたしは左へ。

 ラブホテル街などという、男女がそういうことをするための街を歩くとき、その目的からすれば本来カップルで歩くのが自然というものだろうが、夫でも妻でもない相手と狭い世間ましてやラブホテル街などを歩く気にはなれないから、自ずと自分ひとりで歩くことになる。とは言え、たとえ一人であってもラブホテル街を歩いていることを見咎められたら、違和感なく説明するのも難しく、できることならだれにも会いたくはない。

 前方のホテルから通りに女が一人出てきた。こちらに向かってくるときまりが悪いが、幸い向こうが前を進んでいく。期せずして後をつけるような形になる。わたしが向かっているのは駅。向こうも駅を目指しているのか、自分が進もうとする道を先取りするように角を右に左に曲がっていく。

 いつも近道に使っている小さな路地にまで入っていったから、つけたくもない後をつけていると思われないように、今日は路地に入らずに進んでいくことにした。路地からのルートが合流するところに横断歩道の信号があるのだが、敬遠したはずの女も待っていて、こちらの配慮も空しく結局かち合ってしまった。

 信号を渡ればもう駅だから、向こうも駅を目指していたのだろう。駅に着いてしまえば、あとは人ごみに紛れるだけと思い、信号を待ちながら後ろから女を観察してみる。年恰好は自分と同じか若いかもしれない。身長や体型はよく似ている。服装は地味でも派手でもない。ベージュのストッキングに包まれたふくらはぎが若々しい。後ろ姿を一見する限り良家の奥様だ。

 でも、そんな奥様が、実はラブホテルから出てきたばかり…という秘密をこちらが握っていることに、少しドキドキしてしまう。

 が、立ち止まって信号を待つ間に、膣の奥に放たれた間男の精液が滲み出てくる感覚が、自分もまったくの同類であるという後ろめたさを思い出させる。いや…同類などとはおこがましい…こちらの奥様はきちんと避妊具も使用してなさっているかもしれないのに、こちらときたら安全日であるのをいいことに、膣内射精まで許しているのだから。…などとつまらぬ妄想をしている間に、信号が変わって周りの人が歩き出す。わたしも慌てて信号を渡る。

 券売機の前で切符をどこまで買うか思案する。自宅の最寄り駅まで買ってしまうか、途中のターミナル駅で下車してデパートの地下にでも寄っていくか。結局考えもまとまらずとりあえず電車に乗る。

 つり革につかまってぼんやりと車窓を眺めながら今日の行為を反芻する。股間には一定の異物感。使用した道具が熱を帯びている感じ。男が差した機械油と女が分泌した潤滑油が混ざり合って…。あくびをかみ殺していると電車はターミナル駅に到着する。ここから乗り換えれば我が家に向かう。始発だから席には座れるが、なんだか今日は居眠りしてしまいそうだ…。

 眠気覚ましに定番コースのデパ地下にでも寄っていこうか。乗り換え通路に直結したデパートに入っていく。ここで惣菜を買ってしまえば夕食の用意の手間はかなり省ける。惣菜を買う前にとトイレに先に寄っていく。黒い下着を下ろせば、先ほどまでの名残の粘液がナメクジが這った跡のように股布に滲んでいる。股間をトイレットペーパーで拭き清めショーツを戻す。

 惣菜を見つくろってレジに並ぶ。ふと前を見て思わず声を上げそうになる。先刻までの女がレジに並んでいる。店員が包んでいるのは高級魚の煮つけのようだ。女はクレジットカードで安からぬ勘定を済ませている。店員からカードを受け取る手に指輪が見える。この人妻の昼間の火遊びのことのみならず、間男とまぐわったその日の夜に夫と共にする夜の献立まで知ってしまった。自分も薬指の指輪を右手で触りながら、袋を提げて去っていく後ろ姿を見送る。

 その姿には、ついさっきまで情事に耽っていた様子など微塵もうかがえない。うかがえないがために、秘密を知っている者としては、そっと近寄ってささやいてみたくなる気持ちになる。

 「あの…、今晩のお夕食のお献立ですか?」
 「…はぁ、そうですけど?」
 「さっき、○○町のホテルでおたのしみでしたわよね?」
 「!」
 「ごめんなさい、びっくりさせて。でも、悪い気持ちでこんなこと言うんじゃないんです。わたしも○○町のホテルでたのしんできたところなので、つい声をかけたくなってしまって」
 「…」
 「ここのお惣菜、美味しいですわよね。わたしもよく立ち寄って買って帰るんです。夕食の仕度が面倒で…。おトイレも綺麗で使いやすくて」
 「…わたしもよく使わせてもらっています」

 そんな荒唐無稽な妄想をしていた夕食時、思いがけず夫が話しかけてくる。

 「おい、なにボンヤリしてるんだ。コーネンキショーガイってやつか?」
 「そ、そうね。すごく眠たいのよ」

 食器を洗いながら、あの女もこうしてデパ地下で買った惣菜を夫と食べて食器でも洗っているのだろうと思うと、勝手に親しみがわいてこないでもない。惣菜の値段にはかなり差をつけられていたけれど…。そして、レジで見た横顔はわたしよりも美貌であったと思う。でも、風景に溶け込むには容貌は劣っているこちらが有利…などとカメレオンみたいか。…今日寝た相手の男はどちらが『上』だったのだろう…。

 膨らむ妄想はさておき、今日はたまたま自分が後を歩いていただけで、これまで、今日のわたしのような誰かが後を歩いていたとしても何も不思議ではない。とにもかくにも、どこに誰の目があるかわからない。あの女の地味でも派手でもない、ある意味『ちょうどよい』雰囲気やたたずまいは、参考になった気がする。

 …などと、ラブホテル街をカメレオンのように風景に溶け込もうとするための『参考』に思いを巡らす自分に心中で苦笑する。


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