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イブ
【ファンタジー 官能小説】

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イブ-11

ただ、アッチの方がひと足先に、ナミと一緒にリドル卿に直撃していました。
「買い物帰りに、偶然会ったものだから」アッチは笑いますが、そんなわけありません。
「リドル卿は今の地位を維持するためにイブだけでなく、黒魔術の力も借りていました。まだ下っ端ですが、影響力を見込まれていたようですね。揉み消し作業に協力させられていました」
「きっと逆だよ」あの潔癖男が黒ミサの乱交をしたがるとは思えません。
「レナが行方不明になると、その足取りが探られ、黒魔術教団に辿り着かれるかもしれません。うまく利用されたのね。
その時ちょうど病院に使える身元不明の遺体がありました。合同葬儀場へ運ぶ途中で目的地を変えるだけでした。
それを使って家の火事で死んだことにします。それ以上に調べられることもないでしょう。 というのが表向きの理由です」アッチが言葉を切ります。
「しかし裏があるの」 ナミが続けます。
「あなたは、お父さんに魔術の基本を教え込まれていたのよ。ウィッチにはよくあること。 興味がなければそのままその知識は知識としてだけ残される。
でも、もし魔女となりたいなら、その時には魔女というキーワードですべてがまとまり、新しい意味を持ち始めるのよ。
魔女として素早く覚醒するように教育しておくの、今のあなたの、上達が早いのは、そういう下地があったからなの」
「それって、 ?」
「そう、お父さんはウィッチだったのよ。
黒魔術教団にしてみれば、あとで追われるかもしれない危険な存在。
しかし、それにもましてウィッチの子供を、それも年頃の処女を生贄に使えるということは、その手間を考えてすら、やめられないほどの魅力なの。
お父さんを殺し、警察にも追われないように、あなたの身代わりを用意した。あなたが殺されていたら、それで終わりのはずだったのよ。
リドル卿は遺体を手配しただけ。あとは先輩の教団員が手を下したようね」
「だれ」
「それは知らなかったわ」
わからないのか、言う気がないのか、ナミの顔からは判断できませんでした。
アッチも表情を変えません。
しばらくして、カラザが会いに来ました。
「こんにちは」アッチがキスをします。
「何度も電話をありがとう」
口どうしのキスなのがちょっと気になりました。
「リドル卿が認めたよ」あたしに言いますが、きっとアッチに会いに来たのでしょう。
≪何度も電話?≫ アッチが説明し直してくれてたのかもしれません。
「彼が病院に移動の変更を指示した。その遺体と、火事の遺体が一致したよ。だが、リドル卿はその理由を一切明かさない。まあ、有罪とはなるだろうが、執行猶予がつくだろうね」
「そんなものなの」唖然とします。≪こっちの気持ちなんか考えもしない≫
「それから、レイプの詳細を告発した、妹の写ったビデオも出てきた」 表情が硬くなります。
「そこから店の従業員の証言をもとに、少女の暴行容疑者として議員が取り調べを受けている。 そしてビデオには別の声も入っていた。そこから兄、姉の暴力も明らかになるだろう。そうなると妹に対する保護能力も疑われるだろうね」
「イブはどうなるの」
「成人までどこかの施設で生活することになる。その方が幸せだろうね、君のようにね」 そう言って、帰っていきました。
帰り際、アッチがカラザの腰に手を回して、何かささやいたのも気にしないことにします。
あたしはアッチを見上げました。
「いいですよ。顧問弁護士を呼びましょう」
分かりが早すぎます。
アッチは表向きの仕事として、難民の支援団体の主宰をしていました。
そこのスタッフは後見人選びの経験も実績もあります。あたしもそのお世話になっているのです。
イブの遺産が上の二人から完全に分離され、等価交換され整理されていきました。
兄姉との保護者としての糸は切れます。
そしてまた事件が起きました。


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