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『僕っていけない女の子?』
【SM 官能小説】

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『僕っていけない女の子?』-4

(2)
 僕はまだ自分が女の子だということを受け入れることが出来なかった。ママが持ってきてくれた赤ん坊の頃からのアルバムを見ても、別人の写真としか思えなかった。
 毎日見舞いに来てくれる彼女のことを一応ママと呼ぶようにしたけれど、心の底からそう思っていた訳じゃない。

 蘇生してから二週間後、ようやくベッドでの拘束を解かれ、病室も普通の個室に変わってリハビリを始めることになった。
何に困ったかと言うと、一番はトイレに入る時だった。
 男の僕が女子トイレの方に入ることにどれほど勇気が要ったことか。変態だと思われそうで、衰弱しきっている足が更に竦んだ。

トイレの個室に入って自分の生の股間を目にして、その違和感に目が眩んだ。あるはずのオチンチンが無いことの淋しさ、虚しさを嫌と言うほど味わった。それでも僕にはオチンチンが生えているはずだと思いたくて、空中で幻のオチンチンを擦るような真似をしたりしていた。

鏡に自分の顔を映して何度確かめたことか。
日に日に顔色が良くなっていくだけで、繊細で色白な美形の少女の顔は変わらない。すっごく可愛い子だとは思うけれど、どうしても自分の顔だとは思えない。

 生理が来た時には、さすがの僕も女の子の身体だと認めざるを得ない気分にされた。それでも、心の底では「違う、ちがうっ、違うはずだっ」とずっと叫んでいた。

 緊急入院から一カ月して、ようやく頭の包帯を取ってもらえた。丸坊主同然の頭で、髪の毛はまだ2センチ程度しか伸びていない。
「ほんとお人形さんみたいに可愛いわぁ。まるでこけし人形ね」
 看護婦たちに美少女だと褒められても、僕はますます憂鬱な気分になるだけだった。

その日に、この病院の副院長室に呼ばれた。あの主治医の冴木という女医が副院長だった。
「宮内さん、あなたの頭の傷の方は順調に回復してるわ。でも、まだ記憶が戻ってないことと性の認識が違ってることが残された問題ね。記憶は徐々に戻ると思うんだけど……」
 女医はデスクに座ったまま、僕の丸坊主同然の頭を見て笑いかけてきた。
「僕は男のはずなのに、女の子の身体だなんて。誰も分かってくれないし……僕自身が一番戸惑ってます」
 僕は正直に答えて、女医が何かいい解決策でも言ってくれるのかと期待していた。

すると女医は急にデスクから立ち上がって、なぜか部屋のドアをロックしてから、僕の目の前のソファに座り込んで、話しかけてきた。
「薫さん、実はあなたに話さなければいけないことがあるの」
 いつもの冷ややかな笑みではなく、複雑な表情をしていた。
「あなたは三回も自殺しょうとしたんだけど、なぜだか分かる?……どういう原因かはともかく、あなたは自分が女の子であることをひどく憎んでいて、若い蕾のような命を捨てようとしてたのよ。今回はほぼ100%、あなたは命を落とすところだったわ」
女医が言っていることはよく分かった。
遺書のようなメモにも書いてあったことだ。
「それでね……精神科の専門医たちと相談して、あなた自身があなたの意思でもう一度この世に生きて戻りたいって思えるように、あなたの願いを叶えてあげたの」
「ど、どういうこと?」
 僕は唖然として、口をあんぐり開いたまま女医の美貌を眺めていた。
「あなたの深層意識を完璧に男の子に塗り替えたってことよ。あなたを男の子にしてあげたの」
 昏睡状態だった間に、催眠療法でもって僕の心は男の子にされたということらしい。
「そうしてあげないと、薫さんは天国の入口から入って行こうとしてたの。夢を叶えてあげたから、薫さんの男脳がもう一度この世に戻ろうって思って、精一杯頑張ったの。それとも、あのまま天国に行った方が良かったのかしら?」

 女医は僕にとって命の恩人の天使なのか、それとも呪わしい魔術のような催眠術を操った悪魔なのか、僕には判然としなかった。
 それでも僕が奇跡的に生き返ったのは確かだ。心と身体の性が分裂しているという厄介な問題を抱えてしまったが、冴木という女医に感謝しなければいけないんだろう。


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