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安倍川貴菜子の日常
【コメディ 恋愛小説】

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安倍川貴菜子の日常(3)-2

「き……貴様…」
馬鹿みたいにひたすら笑い続けるエドにとうとうキレたクリスはエドを睨みつけると神速の速さでエドを捕まえ瞬く間にボコボコにしたのだ。
まさに瞬殺だった。
この光景を護はただ唖然と見守るしかなく、クリスの怒りが自分に飛び火しない事とエドの無事を祈るだけだった。
クリスの烈火の様な怒りにガタガタと震える護に救いの手が差し伸べられたのはエドが負け惜しみの言葉を言い気を失った直後に鳴った呼び鈴の音の後だった。
護を急かす様に連打で鳴る呼び鈴に普段ならうっとおしく思う護だったが、今回だけは天の救いとばかりに酔っ払いのクリスを振り解き大急ぎで玄関に向かいドアを開けるとそこには麻生兄妹がいたのだった。
「兄さん、いつも言ってるけどあの呼び鈴の押し方は失礼だよ!」
「まあ、気にすんな。俺と護の仲じゃねーか」
いつもの事で分かりきっていたが呼び鈴を連打したのは兄の圭吾だった。そして、いつもの如く圭吾のバカな振る舞いを嗜める妹の若菜。
麻生兄妹の登場に護は満面の笑みを浮かべると、おもむろに二人の手を取り家に引きずり込んだのだ。
「いやぁ、お前達が来てくれて本当に助かったよ」
苦笑しながら二人をリビングに引っ張る護に違和感を感じた若菜が「どうかしたの?」と尋ねると護は憔悴しきった顔になり、ため息をつき事情を説明しようとした時、リビングからぐい呑片手に顔を真っ赤にしたクリスが怒鳴り込んできた。
「護しゃん!おはにゃしはまだ途中にゃのにどこに行っらんれすか!」
何度かクリスと対面してる二人は今までのイメージをぶち壊す様なクリスの泥酔っぷりにひどく驚くと、さっきの護の態度に合点がいったのだった。
「おや、圭吾しゃんに若菜しゃん。ども、おひしゃしぶりれす…ヒック…」
「ク、クリスさん!?」
麻生兄妹を見つけ上機嫌な表情になり挨拶するへべれけクリスに驚く若菜だったが、圭吾の反応は正反対のものだった。
「いつもお堅いイメージのクリスさんがここまで乱れるってのもありだよなぁ〜」
緩みきった顔でとても幸せそうにしてる圭吾を見て、護はクリスに圭吾を押し付ける事を決意した。

こうして護達が騒いでいる頃、貴菜子は自分の部屋の机に乗っているチョコと話をしていた。
「やっぱり、サンタさんの言った通り神野くんって男の子はサンタさんでしね。今日、お店で感じたチョコと同じ気配とご主人ちゃまのお話を聞いて確信したでし」
「じゃあ、神野くんの使い魔さんにもチョコちゃんの事がバレちゃってるんじゃないの!?」
貴菜子が慌ててチョコに問いただすとチョコは少しだけ考える素振りを見せ、貴菜子が心配そうな顔をするとニッコリと笑顔で言うのだった。
「そこまで心配しなくても大丈夫でしよ。神野くんはサンタさんなんでしからチョコの正体がバレても実害はないでしよ。それに向こうの使い魔はトナカイさんでしからチョコとは少ーし違う存在でし。だから神野くんのトナカイさんはチョコとは使える能力は間違いなく違うはずでしよ」
チョコの説明に安心したのか貴菜子はふうっとため息をついたのだった。
その後もチョコは自分と護の使い魔であるエドとの違いを説明してくれたのだった。
その中で貴菜子なりに理解した点は、チョコとエドは似て非なる存在だが根っこの部分は同じであること。
違う部分については自分達人間に例えると人種の違い程度のものであること。
その違いによって使える能力が違うということだった。
その顕著な例が変身能力である。トナカイであるエドやクリスの本当の姿はリアルなトナカイなので、自身の身体を変身させて自分の主人と日々の生活を送っているが、チョコは光学迷彩の様に姿を消せるので変身する必要性がない事から変身能力はないのである。
逆にチョコが使えてエド達には使えない能力も存在するのだった。


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