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安倍川貴菜子の日常
【コメディ 恋愛小説】

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安倍川貴菜子の日常(3)-3

貴菜子とチョコが色々と話をしていると部屋のドアがノックされ、貴菜子が返事をしてチョコが姿を消すとドアが開き貴菜子の母が入ってきた。
「キナちゃん、そろそろお風呂に入ってちょうだい」
朗らかな笑みを湛えながらの母の言葉に貴菜子は「はぁい」と答えるとタンスから着替えを取り出し部屋を出たのだった。
「エリス様、お久しぶりでし」
貴菜子の机の上から姿を現したチョコは恭しく一礼をすると少し緊張した表情になった。
「チョコ、そんなに硬くならなくて良いわよ。私はもうお姫様じゃないのだから」
楽しそうに笑う貴菜子の母、エリスはチョコを手に乗せるとチョコにお礼を言った。
「それに私は貴方にとても感謝してるのよ。だって、貴方は私にとても素晴らしい人と巡り合わせてくれたんですもの」
「そんな事ないでし。チョコは何もしてないでしよ。エリス様と祐樹様が出会ったのは必然だったのでしから」
チョコは照れた顔を隠す様に耳で自分の顔を隠すと身体をもじもじさせた。
因みに祐樹とは貴菜子の父の名前である。エリスと祐樹は昔、チョコの導きによって出会い恋に落ち添い遂げたのである。
エリスが祐樹と添い遂げた当時は異世界間の婚姻というだけでなく、エリスが一国の姫君という事もあってエリスの国の王宮ではそれは大騒ぎになったのだった。
しかし、エリスの国ではチョコ達使い魔の存在は特別なものだった事、そしてエリスと祐樹の強い意志と父王の理解によって現在に至るのである。
チョコとエリスと祐樹にそんなドラマチックなロマンスが過去にあったのだが、エリスの口止めによって娘の貴菜子は自分の母親が元一王国の姫君であるという事を全く知らなかった。
そして、エリスが昔の出来事を思い出し少し照れた様に微笑むと自分の手に乗せていたチョコを貴菜子の机の上に降ろすと愛おしそうに見つめた。
「チョコ、これからキナちゃんをお願いしますね。あの子も色々な事を体験するでしょうけど、どうか正しい方向に導いてやって頂戴ね」
「はいでし。エリス様、ご主人ちゃまの事はチョコにお任せでし」
自信たっぷりに胸を反らし勢いあまって転びそうになったチョコの姿をエリスは楽しそうに見つめながら「じゃあ、よろしくね」と一言だけ言うと貴菜子の部屋から出て行った。

月曜の朝、貴菜子が登校して自分の教室に入ると「キナちゃん、おはよう」と声をかけられた。
声の主は麻生若菜だった。彼女と貴菜子はこの学園に入学して以来の友達で今ではかなり仲の良い女の子だ。
「あ、若菜、おはよー」
貴菜子は向日葵の様な笑顔で若菜に駆け寄ると若菜も嬉しそうな笑顔で貴菜子に抱きついてきたのだった。
「わわっ、ちょっとどうしたの若菜!?朝からご機嫌みたいだけど何か良い事でもあったの?」
「うん、昨日ちょっと楽しい事があったんだ」
若菜はそう言うと昨日の護の家での出来事を楽しそうに貴菜子に話をした。
以前にも若菜からクリスの話を聞いていた貴菜子であったが、昨日の昼間に幸一郎やクリスと出会っていたので若菜がクリスに傾倒する理由が少し分かった気がしたのだった。
事実、若菜はクリスに対し理想の女性像として憧れを抱いている節があったのだ。
「それでね、いつもは落ち着いてて優しい感じのクリスさんなんだけど、用事があって護くんの家にいったらクリスさんがすごく酔っ払ってて、もう別人みたいな感じで大変だったんだよ」
「そ、そうだったんだぁ」
大変だったと言う割にすごく楽しそうな若菜に貴菜子は思わず苦笑してしまった。
しかし、若菜はすぐに怒った顔になり机に突っ伏したままの圭吾を睨み付ける。
「でも、楽しかったのと同時に恥ずかしい思いもしちゃったんだよねぇ」
そう言うと若菜はため息をついた。
「何かあったの?」と貴菜子が聞くと若菜は圭吾を指差し呆れた様に話をするのだった。
「うん。昨日、お兄ちゃんが酔っ払ったクリスさんを見て『そんな乱れたクリスさんも萌えーっ』って叫んで抱きつこうとしたの…」
普段の学校での圭吾はお調子者の類の生活態度なので貴菜子はその様子を容易に想像できてしまった故に乾いた笑いしか出なかった。


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