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「背徳と退廃・花嫁Mの手記」
【SM 官能小説】

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「背徳と退廃・花嫁Mの手記」-35

(9)
 わたくしの卒論の成績は優・良・可・不可の4段階評価を超える「優+」でした。
 堂島教授の贔屓目だけではなく、文学部の他の教授や准教からも褒められたんです。これほどサド侯爵の哲学が理解のできる若い女性は稀有だと賞賛されたんです。

 ところが、卒業と同時に悲しいことになったんです。
教授は心変わりされたのか、わたくしを冷たく突き放されたんです。お会いしたくて何度もメッセージを送ったのですが、無視されたのです。

 二カ月間、わたくしはじっと耐えました。就職もせずに家でママの家事の手伝いをしていただけの無為な生活でした。
いえ、違います。わたくしは耐えられなかったのです。虚しくて、やる瀬なくて、辛い日々でした。教授無しでは生きていけない身であることを、改めてはっきりと思い知らされたんです。

 チョーカーはずっと首に嵌めたままでした。大学時代の二年間で教授から植え付けられたマゾの愉悦を忘れられるはずないんです。心が空虚さに震え、身体が飢えきって狂おしく哭き叫んでいたんです。

 三か月目に入った六月の小雨が降る日、わたくしは無謀にも堂島教授のお住まいに勝手に押しかけたんです。我慢の限界だったのです。
 堂島教授のイメージ通りの古い煉瓦作りの立派なお屋敷でした。
 教授はお留守らしく、凄く地味な雰囲気の奥様が出てこられたんです。
 わたくしは教授に奥様がおられることすら失念するほど狂っていたんです。

 教授の奥様はそんなわたくしを応接間に迎え入れて下さったんです。
「あなただったのね……耕太郎を狂わせていたのは」
 奥様は鋭い目付きでわたくしをジイッと見据えておられたんです。教授とわたくしの関係をどこまでご存知だったのかどうか、それは分かりません。
「わたくし、教授のゼミでお世話に……」
「いいのよ。何も隠すことなんてないの。あなた、耕太郎からそのチョーカーを嵌めてもらったんでしょ」
「あっ……そ、そうですけど……」
「うふ。こんなクリスタルのお人形さんみたいな可愛らしい娘だったなんて……」
 奥様は嗤いながら、突然わたくしに唾を吐きかけられたんです。
「ああっ」
「何よ。わたしに文句の一つでもあるの?」
「い、いえ……」
 わたくしは唾を吐かれても、教授の奥様の気迫に圧倒されていたんです。

まさか、奥様もサド……?
 わたくしの直感はそう告げていたんです。

「わたしの嗅覚は鋭いの。あなたが何者なのか、一目で分かったわ」
 奥様はソファから立ち上がっておられました。
「さあ、土下座しなさい」
「えっ?」
「土下座して、わたしに謝ることがあるでしょ」

 わたくしは堂島家に訪ねて来てわずか五分後には、応接間の絨毯の上で土下座をして奥様のスリッパで後頭部を踏みつけにされていたんです。
「ご、ごめんなさい……奥さまっ」
「咲江さまとおっしゃいっ」
「ああっ。ごめんなさい、咲江さまっ……わたくしは……」
「泥棒猫でしょ?」
 奥様からご主人の教授を奪った泥棒猫だとはっきりと言われたのです。

「でも、泥棒猫にしては、なかなか華やかな素敵な娘ね。耕太郎の趣味も悪くないわ」
 そうおっしゃって、奥様はグリグリとわたくしの顔面を押し潰すくらいの圧力を掛けてこられたのです。
「泥棒は犯罪なの。人の亭主を不倫で寝取った泥棒猫に損害賠償を請求することだって、わたしは出来るのよ……」
「お許し下さいっ……咲江さまっ」
 わたくしは大粒の涙を流していました。


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